多くの外国人宿泊者は後者を選ぶらしい。
日本人でも、連泊する場合は、両方に行く人が多いのだとか。
私は毅然と2夜連続で「海の星」へ。
結論からいうと、2日目の方がシェフの「らしさ」が感じられ、また食材でも発見があった。

この夜のトップバッターは、香川県産アワビのリゾット。
トリュフ尽くしのコースを出す店はいろいろあるが、ここまで享楽的な組み合わせも、逆に珍しいか。
アワビは、磯の香が鮮明で、小ぶりだがジューシーで味がつまっている。
肝のリゾットも濃厚で、海の豊かさが伝わってくる。

2品目は瀬戸内海産シマアジのマリネ。
天然らしい歯ごたえの身を、叩きにして香ばしさを付加。
各種の大根は見た目もきれいだが、青魚の風味を程よくコントロールしてくれる。

続いては、瀬戸内海産のトラフグに春菊のピューレ。
瀬戸内も天然トラフグの産地なのだとか。みしっとした身質のフグを軽くスパイシーにポアレ。
春菊の苦みが良いアクセント。

こちらは、キクイモの温製スープとフォアグラのポアレ。
トッピナンブールとフォアグラといえば、パリ1区のレストラン「キャレ・デ・フイヤン」で15年以上前に食べたのを思い出す。あれはテリーヌだった。
素材の持つ甘みがうまく強調されたスープに、甘さとの相性がいいフォアグラ。鉄板である。
シェフの来し方がどんなものだったか、一端が想像できる料理だ。

さらに魚料理。瀬戸内産クエのポワレ、ブールブランソース。
これも噛み応えのあるブリブリのクエに、奇をてらわないソースがよく合う。
この辺の魚介は、流れが速いからか、身が引き締まっているように感じる。

メインは和牛ランプ肉のロースト。
最後は無難な着地に。焼き方もソースも基本に忠実。

デザートいろいろ。こちらはラム酒のきいたババ。
富山の「レヴォ」もそうだが、よくもこんなところにこれだけの腕のシェフがいたもんだ、というのが率直な感想。
本場で研鑽を積んだ才能が、沈みゆく日本の地方を活気づけてくれているならば、誰にとってもありがたいことである。
何もできないが、気持ちだけでも応援したい。