すっかり銀座の高級店 喰善あべ  | 御食事手帖

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この秋で開店から2年になる「喰善あべ」
予約もそこそこ取りにくくなり、繁盛店になったのは慶事だが、お会計が随分と高くなった印象。
ワインも揃えるようになったが、なぜか多くはブルゴーニュの赤。
ご自身が好きなのだろうが、料理との相性の問題に加え、高すぎて手が出ない。
値段を聞けるムードではないので定かではないが、日本酒もかなり取っているようだ。
コースは、上が15000円だが、飲むとトータルは跳ね上がる。

しかし、料理の方は以前と変わったようなところはない。
要するに、この2年で銀座的なインフレが進んだ、ということだ。


前菜。相変わらず、見てよし、食ってよし。
冷やし小芋とずいきは素朴な味わい。
モロッコいんげんの白和えは、ちょっと面白い。
房州あわびは、磯の香りが高く、生くちこの棒子は相変わらずの旨さ。


焼きナスとみょうがの合わせ味噌汁。
ここでは白味噌のがうまいのだが、しかしこれも手堅く仕上げている。
ナスの味噌汁が、なぜにここまでおいしくなるのか、うーんと考えさせられる。


造りは、マコガレイ、石垣貝、うに、新イカ。
質は高い。とりわけウニは、濃厚でみょうばん臭が少ない。


淡路の鱧の焼き霜。
これもいいのを仕入れている。身にコクがあり、噛むほどに味が広がる。


気仙沼のカツオは、行者にんにく醤油で。
脂ののりのほどよいカツオに、香りの強い醤油が合う。


鱧と信州松茸の土瓶蒸し。
タネはともかく、出汁がうまい。けっこうな量があったが、飲み飽きしない。
この店は、本当に汁物がハイレベルだ。


丹後の甘鯛と万願寺。
炭火でぱりっと焼きあげてはいるが、甘鯛自体は、まあ、そんなものかという感じ。


炊き合わせは、京都のもぎ茄子と枝豆、れんこんと小豆、ツルムラサキ。
これまた、素朴な組み合わせで、「ながひがし」的な味わい。


最後は、ご自慢のご飯とこれまたなかひがし的なメザシ。
新米でもないのに、米が瑞々しく感じるから不思議だ。

この料理で15000円は、文句はない。
ただ、トータルで30000円と言われると、さすがに敷居が高い感じがする。
もはや銀座の高級店の仲間入り。
たまに余裕のある時にしか行けない店になったということだ。