7月だと、お任せの店はどこへ行ってもハモ、そして鮎となる。
台風などで関西の海が荒れたら、益々この傾向は強まる。
店主がフレンチ経験者ということで、開店当時は特に脚光を浴びた「修伯」。
ここもコースのみだが、以前は色々と変わった趣向をこらしていたので、好きで4~5回は行ったことがある。
久々に出かけてみたが、昼だったからだろうか、かつてほどの面白さは失われたように感じた。
特に、ご自慢だったプチプチといろいろ並べる造りがなくなり、華やかさが減じたように思う。
驚くほど味が濃くなったお椀にも疑問が残る。


まず最初は、「野菜盛り込み」というもの。祇園祭らしいプレゼンテーション。
この中に、20種類ほどの京野菜や西洋野菜が入っている。
調理法も様々。炊いたり、揚げたり、焼いたり、含ませたり。一つ一つ、別々の火通しを施している。ミッシェル・ブラスのガルグイユにも、ちょっと通じる発想である。
野菜好きにはたまらないだろう。が、出るまでに時間がかかるのが難点。最初の一皿は、早くださなければ。

お椀は、淡路産のハモ、賀茂ナス、桂瓜。
塗りの黒で目立たないが、吸い地は色も濃い。最近では東京でもお目にかかれないほど、味が強い。これではまるでスープである。

造りはアコウと太刀魚の2種。昔は10種くらいは平気で並べて、座を沸かせてくれたものだが、寂しい限りだ。
アコウは歯ごたえも風味も良かったが、バーナーで炙った太刀魚は地力に乏しく、焦げの香りばかりが立った。

酢の物は、香川産のホワイトアスパラとタコの柔らか煮。
上は土佐酢のジュレ。料理の説明をしてくれないから、いちいち聞かないと分からない。
タコは上手に煮てあるが、記憶に残るようなものではない。

お凌ぎで、琵琶湖鮎の骨抜き焼き。
これはご自慢なのだろう。細い腹骨まで見事に抜けている。新鮮な鮎だと、うまく抜けるらしい。
カリッとパリッと焼けていて、しかも骨があたらない。これは3,4匹食べたいところだ。


続いては、肝だれで食べるアワビの石焼。
昼の最高額、1万円のコースを頼んだからだろうか。料金の帳尻を合わせるためのような、つまらない料理だ。石焼なんぞは、旅館ででもやってくれ。客の目の前で調理するカウンター割烹で、なぜに石焼か? もっと京都らしいもの、この店ならではのものを出すべきだ。

スズキの塩焼きといちじくの田楽。
長時間ていねいに焼いていたが、身はパサついて、脂の乗りが悪い。
スズキよりも、イチジクの方がはるかに美味。揚げたてのアツアツに、甘い白味噌がなんともいえず、やはりこの店は甘いモノ方面が強味と再認識。


食事は鯖寿司と出汁巻玉子。
このあたりは、さすが京都の店、という風格。




名物の「デザート何品でもOK」は変わらず。
これで女性客の心を鷲づかみにしていたこの店も、昼だからだろうか、あるいはたまたまか、客の入りが悪かったのが気になる。
店主はよくも悪くも典型的な京都の人。
慇懃だが、どこか冷たく、権威主義的な感じ。
それがワインリストによく表れている。
シャンパーニュは、ジャック・セロスのみ(バカ高、誰が飲むのか?)。他も有名高額ブランド品ばかりだが、はたして料理に見合うのか。
それぞれの客の懐も考慮して、せめて料理の額と同等くらいのものも用意する「気遣い」も必要だろう。
唯我独尊では、客離れが進むだけである。
弟子筋の「京料理 藤本」に、そのうち追い抜かれるであろう。
修伯 (京料理 / 祇園四条駅、清水五条駅、河原町駅)
昼総合点★★★☆☆ 3.0