




都心でばかり飲食していないで、たまには足を延ばして新規開拓を、と常々思っているわたくし。
久々に重い腰を上げて出かけてみました。
食事をするだけのためにわざわざ小田急線に乗り、デング熱の危険も顧みず、行ってみました代々木八幡。「専門料理」か何かでみて気になっていた「シャントレル」へ。
駅から結構歩きますし、分かりやすい場所ではありません。
が、結論から言うと、のこのこ出掛けた甲斐がありました。
久しぶりに当たりの店です。
ここのシェフの修業先、「レジス&ジャック・マルコン」は、リヨン方面へ行くたびに予約を入れるも、いつも満席で断られたという苦い記憶があります。
「ミッシェル・ブラス」と双璧をなす「ど辺鄙オーベルジュ」で2年を過ごしたのだとか。
その経験を、料理の随所にちりばめておられるようです。
料理は昼の7000円のコースを選択。

アミューズは、スモークサーモンのリエットやキノコのクロックムッシュなど。
いずれもシャンパーニュのつまみとして、申し分ないです。
最近は鼻くそみたいなアミューズを出す店が多いですが、ここのは食ってうまい突出しです。

続いては、名刺代わりの1品でしょうか、キノコのコンソメ。
これは深いです。このスープをつまみに、ワインが飲めます。
ピエ・ブル、シャントレル、ジロール、トロンペットなどで出汁を取ったそうで。
霧雨にしっとりと濡れたオーベルニュの森の風景が想起される味と香りです。


さらにおつまみ風が続きます。
流行りのとうもろこし、ピュアホワイトを使った、白エビとのベニエ、冷たいスープ仕立て、そして生がそのまま一かけら。
まず生をかじって、糖度の高さを舌で確認。その後、アツアツのベニエとひんやりしたスープを楽しみました。こういう食わせ方は悪くないですね。

こちらはキノコのムース。下には刻んだ車エビ、上にはシャントレルとトロンペットを蜂蜜ビネガーでマリネしたものが乗っています。クリームでコクをつけたなめらかなムースに、むっちりとした半生のエビ、さらには甘酸っぱさとシコシコとした食感のアクセント。
きちんと構成された一皿で、ワインがすすみます。

続いては、スコットランド産サーモンの瞬間フュメと冷やした茄子を合わせた料理、ロックフォールのソースです。これまた、完成度が高い料理。まず、燻製の香りと茄子が引き合います。さらにロックフォールのちょっとクセのある風味が、サーモンの脂っ気と相乗して、うまく調和。スモークサーモンは通年出しているようですが、季節ごとに内容が変わるそうで、これも楽しみです。

魚料理はアマダイを蒸したかポシェしたもの。これにイタリア産の「トロンボーン」というズッキーニやジロールをあしらっています。ソースはフュメにバターを溶かし込んだもの。
アマダイの持ち味をストレートに味わえる料理法で、ちょっとシャバシャバしているソースも邪魔にならず、魚を引き立てています。

メインは、シャラン産の鴨。蜂蜜と赤ワインのソースで、きのこはピエ・ブルです。
最後は割と無難にまとめた感じでしょうか。もう少し「らしさ」というか、遊びがあっても良いような。今の季節、肉料理で特徴を出すのは難しいのでしょうね。
ランチは土日のみのようですが、この内容で7000円なら大満足です。
価格帯ごとに分かれているボトルワインも、良心的な値付け。
ただ、コースのみで、これだけ様々な料理が出るとなるとペアリングの方が合理的なようにも思います。
いずれにしても、夜に再訪して、実力のほどをもう一度確認したいものです。