




神田の裏通り、微妙な立地。
台風の影響が心配された夜でしたが、店はいつも通り盛況でした。
前日にリコンファームの電話を寄こすあたり、キャンセル待ちまで控えているのでしょうね。
人気もそのはず。
ここのコース料理は、広尾の「ジャスミン」に勝るとも劣らないコスパです。
が、今回は端々に綻びが見えてきたかな、と思わぬでもありませんでした。
1万円のコース料理、以下のものを食いました。

前菜は「“海と山の幸”本日のおまかせ前菜7品盛り」。
「うわー、すごーい」と歓声を上げるところですが、良く見ると、以前よりシャビーな内容。
特に「フカヒレの刺身」と称するものが意味不明。生のようには感じませんし、味もない(当たり前か)。疑問手です。
蝦夷アワビは、見た目には豪華そうですが、味は冴えません。
つぶ貝、タコも量は少ないし、沢蟹1匹で1品に計算されるのは、いかがなものか。
「ジャスミン」のように、もうちょっと食いでのある前菜を出してほしいところです。

続いては、「宮廷風、肉厚な大フカヒレ≪毛鹿尾ひれ90g≫の譚家式煮込み 」
あまりフカヒレを愛でない主義なのですが、これは素晴らしい。
ヨシキリより希少なモウカザメ、食べるのは心苦しいような気もしますが、口に入れると繊維がなめらかなので驚いたしだい。
金華ハムと干し貝柱のみで、塩を入れずに煮込んだという煮汁が、また絶品。
ふくよかで、味に角がなく、見事な調和と統合。
これはおみそれしました。

フカヒレの後は、「特大活オマール海老と完熟トマトの濃厚辛み炒め」。
元は「特大」だったのでしょうが、一人あたりの量は「並」でした。
殻は大きいのですが、身は詰まっておらず、繊維もガジガジしていてイマイチ。
味は甘・酸・辛のバランスが良いのですが、いかんせん、前のフカヒレにカネを使い過ぎたようです。

続いては「希少“紅色ツバメの巣”入り、冬瓜の雲丹・魚団子・蟹などの海鮮詰め」。
出汁はうまいのですが、つまるところ、大半は冬瓜です。
ツバメの巣は、ビジュアル以上の効果なし。海鮮詰めも、冬瓜に合っているかどうかは微妙です。
味や食感が一本調子で、やや飽きがくる煮物でした。

コースの山場、肉料理がこれ。「雲林特製釜焼き北京ダック・本日の特選肉料理 」。
シンタマとか何とか言っていた和牛の焼き物、ちょっと元気がないですね。
北京ダックも、終盤に一つポツンと出されると、なんだか盛り上がりません。
後は締めの飯か麺、というこの段階では、もうちょっと華があってほしいところでしょう。
ギリギリの原価率でやっている努力は、十分認めます。
配分の問題でしょうか。
後半に息切れすると、全体の印象に響きますね。
そのあたり、構成力も問われるところです。
失望というほどではありませんが、以前ほどの満足感は得られなかった一夜でした。