読者の皆様、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、年末年始、朝地はスペインの首都、マドリードで過ごしました。
7泊しましたが、マドリードとその近場だけ。
貧乏性、もとい、勤勉な日本人観光客とは違って、欧州都市をいくつも点々と回るようなマネはしませんでした。
当たり前です。
パリに4年半滞在しても、パリを理解し尽くすことができなかった、拙い身です。
まして、たかだか1週間やそこいらで、欧州の主要都市たるマドリードを理解できるはずなどないのです。
一都市に少しでも長くいることで、その街の素顔を垣間見よう、できればその街の美味いものを、一日でも長く食ってやろう――。
こうしたごく自然な欲求から、マドリードに居座る旅にしたしだいです。
そもそも、移動って、面倒くさいですよね。
ものすごく時間を奪われますし。
パリ、ロンドン、ローマ、欧州三都物語・・・、みたいなパックツアーは、話を聞くだけで身の毛がよだちます。
小市民、もとい、欲張りな日本人とは裏腹な旅でしたが、マドリード界隈のごくごく一面をちょっとだけうかがう機会にはなりました。
某航空会社の経由便で、マドリードに18時過ぎに着。
それから旧市街のど真ん中、サンタ・アナ広場付近のホテルに投宿。
荷物を置いたら、即、バルへ直行。
まず最初に行ったのが、サンタ・アナ広場に面した有名店「シンコ・ホタス」。
生ハムの製造者が経営しているバル・レストランです。


とにかく、混んでます。
スペインはユーロ危機で経済は混とんとしていると聞いていました。
ところが街の様子は全然違います。良さげなお店は、どこも超満員。活気にあふれていました。
もちろん、私が見たのは現実のほんの一面ですので何ともいえませんが、とにかくマドリードの年末年始は街中が人又人の大賑わいでした。

さて、お店のメインは、生ハム。
ハモン・イベリコです。
注文を受けてから、手切りでシコシコやってくれた生ハムです。
こんなの、別に東京でも食べられるでしょーー。
そう思ったあなたは、食材を単なる工業製品と勘違いしている、お気の毒な味オンチです。
例えば、瓶詰されたワインだって、輸送は過酷な試練です。
産地で安置されているワインと、長旅をしたワインとでは、状態は違ってきますよね。
チーズやハムだって、同じなんですよ。
雪印のカマンベールや、伊藤ハムの生ハムのような、大量工場生産品とは、全く違う世界。
生ハムをワインに例えれば、豚はぶどう、土地の風はテロワール。
肉を乾かす風は、文字通り、風味を生む空気の「土壌」。
生まれた土地から離れれば離れるほど、持ち味である風味から遠ざかります。
生ハムもまた、より産地に近い場所で食べるべし。
私はそう思います。

モダンに盛られたタパス。
コイカの揚げもの、生ハム入りのコロッケ、イベリコ豚の頬肉の赤ワイン煮。
そして、豚の血とお米のソーセージ、モルシージャ。
これがうまいのなんの。
というより、豚の血の料理は不味くするのは難しいでしょう。
血こそ豚の本質ですから、よっぽど悪意を持たない限り、不味くはできないものです。
食事に合わせてグラスワインを頼みましたが、気持ちいいのが注ぐ量です。
毎度惜しげもなくたっぷりと、それこそ日本のレストランの軽く3倍くらい注いでくれるのです。
たっぷり食って、しこたま飲んで、それでもたいした額にならなかったマドリード・バル。
この店で、楽しい肩慣らしをさせてもらいました。