
ひとつ前の記事のとおり、昼に「龍景軒」の飲茶を食べすぎました・・・。

しとしと雨が降る香港の街を歩き続け、遅い時間にようやく空腹感が戻ってきました。
ダメもとで、すぐ近くのホテルのレストラン「明閣」に飛び込んだところ、幸運にも空席がありました。
ミシュラン香港版で2つ星、大変好評なヌーヴェル・シノワの店です。
「アラカルトで軽めに」と希望を伝えたところ、親切な店員さんは、少量から頼める料理をあれこれすすめてくれました。

まず「じぇ」っと思ったのが、このスープ。
「八宝コンソメ」と訳したらよいのでしょうか。
魚の浮き袋、干しシイタケ、竹の子、しょうが、乾燥させたタンジェリン(柑橘類)の皮、鶏肉、きくらげ、が入ったスープです。
珍しく白濁していて、おまけにとろみもあります。唇のまわりにねっとりくるのは、浮き袋のコラーゲンでしょうか。
普通、この手の広東の店では、澄んだ上湯のスープが看板料理と相場は決まっています。
しかし、この店は、このスープで2011年の香港料理アワード金賞を受賞しているのだとか。
確かに、出汁が深く重層的で、香り豊か。一匙ごとに「ふぅ~ん」と感じ入ってしまいました。

続いて、「じぇじぇ」だったのが、この料理。
タカマイ(ハタの仲間、ジャイアント・グルーパー)の身でエビのミンチを巻いたもの。
揚げ焼きしたようになっています。
皮の付近のハタの身は、これも脂とコラーゲンがたっぷりで、食感がむっちりねっとりきます。
これにプリプリのエビを巻き込むのですから、よくもここまで考えるもんだと感心します。

噛むと断面はこんな感じ。香り良く香辛料をきかせています。
カリフォルニアのシャルドネが飲みたくなる料理でした。

これも、この店のヌーヴェル・シノワを代表する料理。
鳥ひき肉と白くわいを寄せたものに、トリュフをまぶしてさっと焼き上げた料理。
下は、バター風味のかぼちゃ。
さて、これは広東料理なんでしょうか?
フレンチといっても、全然通りますね。
香港の高級店からはフカヒレが姿を消した分、いきおいトリュフやフォアグラなど海外の高級食材で単価を上げようという傾向が見て取れます。
広東料理の行き詰まり、のような気がして、この種の料理にはあまり好感が持てません。

締めは牛肉あんかけ揚げ焼きそば。
見た目、ごく普通です。が、こういうオーセンティックな料理で勝負しても、十分やっていけるレベルだと感じました。
遅い時間の夕食にしては食い過ぎてしまった、と反省ひとしきりの夜でした。
香港で目新しい料理を食べたい向きには、おすすめです。