雪の日の外食 | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

各地、大雪に見舞われた成人の日。
交通機関はマヒ。外出もままならない本降りの窓外を眺めながら、ふと、ひらめきました。

「今日なら、席はあいているはず」

携帯電話帳「か」の欄を開き、間違えて「カルミネ」に掛けないよう注意しながら電話しました。
今やすっかり人気店となった「カルネヤ」。
最近は全然予約が取れません。
昔は当日の電話でもOKだったのに、すっかりハードルが上がってしまいました。
地元民としては残念この上ありません。

しかし大雪の祭日。ミーハーグルメ族のキャンセル続出だろうと思ったら、案の定、空席あり。
ダウンジャケット、長靴、ボロいビニール傘で完全武装。
まるで八甲田山のような大久保通りを雪中行軍。牛込警察署前で遭難しそうになりながらも、どうにか「肉の楽園」にたどり着きました。

命がけの外食ですから、目いっぱい食わなきゃ損です。
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前菜は、カルネクルーダ。タルタルステーキの表面をちょっと炙って出してきました。
これが、めちゃくちゃうまい。
部位が良いのか熟成が良いのか、とにかく香りがいい。ケッパーなどで付けた酸味のバランスも見事。
添えた塩昆布が、これまた実に良く合う。
ピエモンテの正調レシピを、独自に進化させた逸品です。

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パスタは、ペリゴール産トリュフのタリオリーニ。
エロティックなトリュフ香を、シンプルに味わう趣向。
トリュフは、こんなパスタをハァハァあえぎながらかきこむのが、一番官能的な食べ方でしょう。

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メインその1は、さの萬の熟成牛ビステッカ。
きれいな赤身で、熟香はそんなに強くありません。
ワッシワッシと奥歯で噛みしめると、肉の旨みと血の風味が口に充満していきます。
病的な霜降り和牛が蔓延る中で、このような肉らしい肉をシンプルに食えるのは、うれしいかぎりです。
寒さで縮こまった体と脳に、肉の活力が沁み渡っていきます。

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メインその2は、同じくさの萬の熟成牛カツレツ。
これは、初めて。
ミラノでミラノ風カツレツをあれこれ食べて、いい思い出が一つもない私。
半信半疑で食べましたが、こりゃうまい。
これがイタリア料理か、と問われると窮します。前菜同様、「カルネヤ料理」と言うしかないでしょう。フレンチもイタリアンも、今は「自分料理」の時代。本場を超えた「自分オリジナル」が、この店にはあります。

これらの肉料理に合わせたワインは、もちろんカリフォルニア。
スタッグリン・ファミリー・ヴィンヤードのカベルネ・ソーヴィニヨン1996年です。
こんなワインを持ち込む変態は、他にいないでしょうね。
某カリフォルニアワイン輸入・販売の実力者に2008年を飲ませてもらって以来、気になっていた銘柄。果実味の凝縮、エキス感と甘みが強い分、酸が弱いタチ。こういうカリ・カベはちゃんと熟成するのだろうか、と疑問でした。

飲んで納得。きちんと熟成していました。
丸いタンニンの柔らかな渋みと、果実味の奥に光る優しい酸。東洋系スパイスのニュアンスが面白く、あるいは中国料理と合わせる手もあったかも。

都心大雪のおかげで、非常に満足度の高い外食ができました。
年内には、近隣で2号店を始める計画もあるのだとか。
商売繁盛で結構なことですが、地元のファンのことも忘れないでいただければ幸い。