




ここや「FEU」みたいな店を否定して、「フロリレージュ」や「レフェルヴェソンス」みたいなお店を褒めそやす人の方がナウいんでしょうね。
当方、別にダサくて結構。
皮相的な楽しさより、しみじみと旨いもんを求めるタイプですので。
さて、前回の訪問で、掟破りの「ダブル・ジビエ」コースを食し、すっかり気に入ったしだい。
「もう一度、あれを」と思って再訪したのですが、シェフからは思いがけぬ提案。
新潟の窒息鴨を1羽丸々食ってはどうか、とのサジェスチョン。
謹んで、頂戴いたしました。
前菜一皿目は、こちら。

定番のレンズ豆入りフォアグラのテリーヌ。
地味といえば、地味。しかし、大事なことは食べて旨いかどうか。
フォアグラは、あれこれこねくり回す店が多いですが、それは質の悪さを隠すまやかしの場合がほとんど。
このテリーヌは、逃げ場がありません。味も優しく、香りもほのかなレンズ豆は、そっと寄り添うだけ。あとはフォアグラだけのガチンコ勝負です。
自信があれば、余計な粉飾はしないもの。食材でも女性でも同じですね。

前菜2品目は、カワハギのカルパッチョ。
肝をオイルとビネガーで整え、蕪をのせています。
フレンチとは思えないほど、カワハギの質が良好。肝の香りもちゃんと伝わってきます。

北京ダック、ではありません。
散弾の跡がない、きれいな野鴨。

まず最初に、皮下の身の部分を、シンプルに塩コショウで。
ジャンルは変わりますが、狙っているのは「と村」と同じ。
裸の素材そのままを味わってもらおう、ということ。
モノが本当に良いなら、手をかけずに食ってうまいはず。
ただ、そこに、伝統の継承による人智をプラスして、一段昇華させましょう、というのがフランス料理の世界。

高みを目指すと、こうなります。
骨から何から絞り込んだサルミソース。野鴨の持ち味を邪魔するものではありません。その旨さを巧みに液化して、肉に絡みつける食べ方です。
骨髄まで、余すところなく、全て食べ尽くす技術。
古さや新しさを超越した領域。無駄なく味わう、ということです。
胸肉は、見事に生々しく、血潮の風味が舌にべったりくる具合でした。

第3サービス。
モモや砂肝、ハツなど。
再びシンプルで直球の世界に逆戻り。モモの皮がうまくてたまりません。
ずっと食べていたくなる野鴨でした。

合わせた持ち込みワインは、これ。
ボンドのメイトリアーク1999年。初リリースの年だったとか。
こんこんと湧いてくる香りは、黒いベリーのジャムやカシスのリキュール、インクにレザーなど。上等のポムロールに通じるものがあります。
一口飲んでうっとり。
深く、なめらか。そして長い。
シルキーなタンニンと丸みを帯びてこなれた酸。やりすぎのギリギリ手前までの凝縮感。
濃いけど、飲み疲れない。今飲んで、本当においしいワインです。
サルミソースとは抜群でした。
これで109ドルとは、何かの間違いとしか思えません。もっと買えばよかった・・・。

デザートも手抜きなし。
極めて満足度の高いジビエコースです。
新店訪問自慢が生きがいの人以外におすすめいたします。