




昔の恵比寿店だって、ワインをあれこれ飲むと結構なお会計になりましたから、丸の内の天空では、さらなる覚悟をもってのぞみました。
見事な夜景が一望できる店内には、茶髪のシェフが闊歩する姿も。
ただ、客に挨拶するでもありません。あくまで存在アピールのようです。
シェフや店員さんたちは、お互い気楽におしゃべりしていたりしますが、客に対する時は日本特有のツンとすました無機質系のサービス。高額店はなんでこうなんでしょうね。
さて、夜の料理は、コースが4種類とアラカルト。
上から2番目の13000円のコースを選択しました。
アミューズは、「魚貝の入ったテリーヌ」。
「何の魚貝?」と聞いたら、「・・・、ホタテとか・・・魚貝です」との応答。
イレギュラーなコミュニケーションはご法度のようです。
味の方は、アミューズとしては良くできていて、出だしはまずまずです。
前菜一皿目は、「ボタン海老のカルパッチョ 柚子風味 フランボワーズのソルベ添え」。
半球状のボタン海老の中には「カリカリの野菜が入っています」と店員氏。
しかし食べてみるとごく普通の生野菜でした。
バルサミコのソースもごく普通で、全体的に陳腐な印象が否めません。
フランボワーズのソルベは、エビとも野菜とも合わず、どうしたものか思案にくれました。
2皿目は、「フォワグラのポワレと聖護院かぶのマリアージュ 新ごぼうのソース」。
フレンチから和食に至るまで、多くの店でみかける取り合わせです。これも、発見がない。
同じ食材の組み合わせでも、モナリザは一味違う、と思わせる何かが欲しいところです。
魚料理は「ロールにした舌平目のムニエル サフランの香るブールブランソース」
「コルドン・ブルー」の教本にありそうな料理です。
王道を否定するつもりはありませんが、その場合は客をギャフンと言わせるくらいの「境地」を示す必要があるでしょう。
肉は、鹿と子羊のどちらかをチョイス。
「仔羊ロース肉のトリュフ風味ロースト 冬の味覚をのせてグラチネに」を選択。
これも非常にオーソドックスで、手堅い料理です。
冬野菜を彩り別に層にしたグラチネと、絵画的なお皿がやけに印象に残りますが、肝心の肉はその影に沈んでいるように思いました。
これにフロマージュ三種とデザート盛り合わせが付きます。
料理が不味いとは思いません。
ただ、13000円払って、またぜひ食べたい、との食後感を持たせるものは、見当たりませんでした。
硬いサービスも最後まで打ち解けず、お店の方も客に常連を期待している風にみえません。
場所柄、一見さんが次から次へとやってくるのでしょうね。
それで経営がうまくいくなら、大変結構なことです。