




芝と汐留に続く3軒目ということで、オープン当初は「いつまでもつか」と揶揄する声も聞かれた銀座店。
しかし、景気は上々のようです。
個室からは、羽振りのよさそうな連中が、美女をぞろぞろ連れて出てきましたから、世界経済とは無縁の客に恵まれているのでしょうか。
さて、この一年お世話になった方との忘年会ディナー。23000円の「グラン・ムニュ」を選択。
先様は、まずアミューズの山羊のカルパッチョから好感触。ご馳走のしがいがあります。
続いて、前菜1皿目は、「手長エビとオシェトラキャビア」。
これ、前も食べましたが、あんまりおいしくありません。
まず、手長エビの質がそんなに良くない。辻堂の「玉寿司」で食べる生の手長エビなんかに比べると、鮮度の点で劣ってます。同様に、オシェトラキャビアもパッとしません。
生姜のエスプーマとか、工夫はしているようですが、入りのこの料理は、もう替えた方が良いでしょう。
続いて、「アワビの燻製 肝のクーリ」。
端の硬いところはベニエ、真ん中は燻製、それと細かくタルタルにしたもの、と3種の調理法が楽しめます。が、量が少ない。少なすぎ。こういうミニチュア料理は、喜界島出身シェフには似合いません。
採算とかが皿にチラつくと、グランメゾンでの食事は興ざめです。
3品目は、「キジのブイヨン仕立て 腿肉のキャベツ包みとクネル」。
パリのステラマリスで90年代後半の冬、何度もいただきました。
それのミニチュア版・・・。腿肉のキャベツ包みの、あまりの小ささに、別の感動を覚えました。
キジのブイヨンは、非常に優しく、野鳥の滋味がじんわり沁み込んでいて良いのですが、ガラスの皿に注ぐと冷めるのが早いようなので、要改善。
次いで、シェフの冬のスペシャリテの一つ、「チリメンキャベツ、フォアグラ、黒トリュフのテリーヌ」。
パリのステラマリスで初めてこれを食べた夜のことを、今もはっきり覚えています。
食卓を囲んだ4人とも、皿から沸き上がる香りに鼻をふくらませ、一口食べて目をひんむき、ほぼ同時に「うわー」っと声をあげました。
びっくりたまげるうまさだったのです。
その日本版。はっきりいって、フォアグラ少なすぎ。トリュフも。キャベツ度が高いので、あの感動が蘇りません。オリジナルを知らなければ、無難においしいのですが。
続く魚料理は、「ドーバーソールのロティ」。ごく普通。なぜにドーバーから魚を取り寄せるのか、今一つ不明です。
さて、ここまでダラダラ不平不満を書きましたが、メインはきっちりやってくれました。
「ジビエのパイ包み」。
これも冬のスペシャリテですね。
でも、昔と違って芸が細かくなっています。
パイの中央は、トリュフとフォアグラ。それを青首の胸肉で巻いて、その周りとジビエいろいろのミンチで包み、さらにパイ生地で覆っています。
ソースがまたうまい。赤ワインとジビエのジュが濃密に凝縮されてました。
料理として、非常に完成度が高いです。が、しかし、これも少ない。コースだとパイ半割分なので、なんだか食った気がしません。23000円もとるなら、全部くださいよ。お願いです。
食後のフロマージュも、コミの人が「3種類までにしてください」とケチくさいことを言います。
誰だ、そんなしみったれたルールを作ったのは。店、傾くぞ!
デザートは、「パンペルデュにトリュフをあわせて セップ茸のアイスクリームと」。
食後になって、またトリュフの香りがもわーんと漂います。
自分からは絶対に手を出さない(嫌いです)パンペルデュですが、ここのはアレンジがきいていて、なかなかの味。セップのアイスは、なんだかよく分かりません。
繰り返しますが、私は吉野ファンです。しかし、銀座の今の路線は、どうも合わないようです。
2人で、グラスシャンパン、グラスの白色々、赤ボトルと頼んで、お支払いは結構な額になりましたが、「食った!」という満足度は高くありません。同じ払いなら、「レ・セゾン」を選ばざるをえないでしょうか。
是非とも改善に取り組んでほしいものです。