ラ・トルチュ 広尾  | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

★★★☆
かの友里征耶は「すべてが中途半端」とこき下ろしている「ラ・トルチュ」ですが、私には至極まっとうなビストロとしか思えません。料理の質も着実に向上しています。


ミシュラン星付き高級店のオーナーシェフがセカンド店としてビストロをやるのは、良くある話。
パリのギー・サヴォアが、「レトワール」など次々とビストロを展開したのは90年代のことです。

問題は、「ミシュラン星付きシェフの別店」となると、日本人の場合、期待値が過剰に高まり、満足のハードルが不当に上がってしまうことです。
パリに住んでいる時、日本からのお客さんをその手の店に連れて行くと、よく「思ったほど美味しくなかった」と言われたものです。料理そのものと料金を考えれば、十分満足のいく時であっても、なかなか冷静な評価は下せないようです。

だいたい、三ッ星の超高級店とファーストフードの間に位置する料理店は、どれも「中途」の存在であるのは当たり前です。星付きシェフの店なのに、星付き店と同じレベルの料理を出さないことが中途半端と言われたら、大抵のセカンド店は立つ瀬がありません。

さて、そんなつまらん話はさておき、私にとっては正統派のビストロ料理、今回もなかなかのものでした。

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まずは、鴨の脂で揚げたフリット。
端っこの方がサクサクでカリカリで、やめられない、とまらない、になります。
今一番好きなフリットです。

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シェーブル・ショー。焼いた山羊チーズのサラダです。
普通フランスでは野菜だけですが、ここのはベーコン入りで豪華です。でも安い。

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看板料理、パテ・アンクルート。
前にも増して、美味くなっています。本家との差がいよいよ縮まりました。肉同士、それぞれ主張しながら、それでいて一体感があります。

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干し果物入りのフォアグラ。これは本家とはまだ距離があるものの、この料金なら文句はありません。
これ一皿を甘ワインでチビチビやる午餐、なんてのもいいですね。

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ブーダンノワール、やっと食べられました。いつも「ない」と言われていたので。
腸詰ではなく、パテタイプのブーダン。
もうちょっと血のニュアンスが残る、ねっとり系の方が好きです。脂と香辛料も足して欲しい。

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和牛のステーキ。相変わらず、きれいなサシです。100グラム2500円は高いか安いか。

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こちらは和歌山で採れた小猪のシンプルなグリル。
身が柔かく、香りも淡い猪肉です。個人的には大年増の強烈な芳香を放つ猪の方が好き。
でも、熟成したブルゴーニュとはちょうど良い相性。

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リンゴのタルト。薄焼きタイプです。

中途半端どころか、ビストロ料理を存分に体感できる良店です。
唯一、食べ過ぎには注意しましょう。