玉石混交の神楽坂和食界。うたかたのように浮かんでは消える店が多いですが、さて、ここはいつまで持つでしょうか。店内雰囲気や器などは良いのですが、なんといっても肝心の料理が冴えません。
1対1の接待が多いわたくしにとって、一番困るのは相手が喫煙者の場合。
「個室、2人利用可、喫煙可」のお店は、非常に少ないのです。
今回も困りに困り果てた末、神楽坂の裏通りにあるこの店「しふく」にしました。
しふくは至福でも私腹でもなく、「仕覆」と書くそうです。
お茶道具の言葉で、茶入れを包む布のことだとか。茶懐石の店なんだそうです。
一軒家風のたたずまいといい、1階の小上がりの感じといい、雰囲気は申し分ありません。
料理も、先付けの「京湯葉 葛あんかけ 礼文雲丹を添えて」までは良かったです。
礼文雲丹の色味と鮮度はイマイチだったものの、あんかけの味加減はまあまあでした。
しかし、それ以降は、全く印象に残りません。
八寸は子持ち鮎と枝豆くらいが普通で、後は何を食っているんだか良く分からないチマチマしたものばかり。
造りは、まさかの黒鯛と帆立。1万円のコースでチヌはないでしょ。しかも量がすくない。
お椀は鱧の葛叩きとじゅんさい。
今シーズンは「京味」を始め、何度も口にしたコンビですが、ここのは全然ダメでした。
まず、輪島塗のお椀に口を近づけると、ほんのり香水のにおい。
口紅か何かの洗い損ないでしょうが、残念です。
さらに、出汁がヌルイ。温度が低いから葛もじゅんさいもヌメっとした口当たりになります。
とりわけ温度が肝心な椀ダネですから、良い店は、椀に注いだ瞬間に出してきます。
自慢の輪島も泣いてます。
焼き物は、グジの付け焼き。パサっとして、イマイチでした。
良い素材なら、付け焼きなんかに必要がありません。
ランチならいざ知らず、夜のコースにこの程度の焼き物では、リピート客は増えません。
その他の料理も全然盛り上がらないまま、最後は鯛茶漬け。
これがまた、味が薄ぼんやりしていて、何とも締まらない最後でした。
神楽坂の和食は、これがあるから怖いです。
「石かわ」は高すぎ、「虎白」は予約困難、となかなか使い勝手の良い店がありません。
どなたかご存知の方、教えてください。