




京都「和久傳」で修業した若主人が孤軍奮闘で人気を集めている日本料理店「うえ村」。
カウンター6席の客を相手に、下駄を鳴らしながらちょこまか料理をするさまは、見ていて退屈しません。夏のこの時期は、鱧の骨切りで小気味よい包丁の音を聞かせてくれます。
12000円(たぶん)のコースは、なかなか充実してました。
初手は、煮アワビ。
サイズが小さめなので、一流寿司店ほどの素材の良さはありませんが、丁寧に味を含ませてあります。肝がまた濃厚。ビールより日本酒向きなので、果たして最初に出すのがいいかどうか。
次いで、焼き鱧ざくのポン酢ゼリーがけ。
これの方が最初にふさわしい。香ばしい鱧ときゅうりの瑞々しさが良く合います。
お椀は、牡丹鱧と早松茸(さまつ)とじゅんさい。鱧はきれいに包丁が入って、ふんわりした食感です。出汁も澄んだ味わいで非常に良い。ただ、やっぱり早松茸は「さまつ」というだけあって些末な感じがします。香りが弱くていけません。食材コストが余計にかかるなら、使わなくていも良いのでは。
造りは、鱧の焼き霜とボストン産マグロの中トロ。
マグロは量もたっぷりつけてくれます。いつもマグロを出すのは、静岡出身の主人の心意気なんでしょうか。ただ、これも寿司屋に買い負けるくらいなら、もっと日本料理屋にふさわしいものを使った方がいいでしょう。
鱧の焼き霜は、去年食べたのが抜群に良かっただけに、それに比べると今回の天草産はちょっと痩せてる印象。
霜降りの牛肉の薄切りに、実山椒と塩昆布をふりかけた一品は、不味いはずがありません。家でもやってみようと思いました。
冷やし鉢は、冷たいナスの煮物にウニをのせた「うに茄子・夏バージョン」がもちろん美味。これでシャンパンでもやりたいものです。
揚げ物は、夏の定番・トウモロコシのかき揚げ。まだトウモロコシが旬じゃないんでしょうか。甘さがもう一つ足りませんが、それでも好物なのでボリボリ食べました。
締めのご飯は、天然うなぎ(800グラム)の白焼き丼。皮目はパリンパリンに香ばしく焼きあげてます。実山椒の自家製たれが、脂の多い身質に良くマッチ。これが、最後の食欲をかきたててくれます。おくどさんで炊いた飯と最高の取り合わせで、大満足のフィニッシュとなります。
所々、食材に?がつきましたが、それでもトータルでは非常にレベルが高いです。
京都に行けなくても我慢ができる一軒です。