越生 | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

「越生」の火葬場に行った。

 

車で向かった。

 

埼玉県である。

 

恥ずかしい。

 

読むことができなかった。

 

葬儀社さんに「おごせ」だと教えてもらった。

 

葬儀は鶴ヶ島にて勤めた。

 

「念の為、地図をお渡ししておきます」

 

出棺前、職員さんが案内図を下さった。

 

普通、坊さんは霊柩車の後について火葬場へ行く。

 

道中には必ず信号がある。

 

合流などでは車列の間に車が入る。

 

すると、霊柩車から大きく離れてしまうことがある。

 

距離ができると、少し先で霊柩車は必ず待っていてくれる。

 

安心である。

 

ただ、こちらが道を間違うことは大いにありえる。

 

だから心配してくれたのだ。

 

「道のりは、15キロくらいです」

 

笑顔で説明してくれた。

 

進んでいくにつれ、畑が増えてきた。

 

先には尾根がみえている。

 

秩父連峰であろう。

 

緑の景色が広がっていた。

 

半時間ほどで火葬場に着いた。

 

車のドアをあける。

 

辺り一面に綿のようなものが飛んでいた。

 

(なんだ?)

 

私には不思議な光景だった。

 

しかし、だれも気にかけている様子はない。

 

炉前にて読経をつとめる。

 

荼毘に付す。

 

1時間半ほどして収骨となる。

 

儀式は無事に終えた。

 

御遺族とは火葬場で別れた。

 

「綿みたいなものは何ですか」

 

どうしても気にかかる。

 

職員さんに質問をしてみた。

 

「よくわからないです。でも、裏の霊園から飛んでくるようです」

 

やはり、気にしていないようだ。

 

(よし、寄ってみよう)

 

帰路につく前に見学してみることにした。

 

管理棟の近くに車をとめた。

 

墓石が斜面にそって並んでいる。

 

坂道を登った。

 

(広い……)

 

丘の上から周りをながめる。

 

どこまでが敷地なのかわからない程、広大だった。

 

遠くには、山々がみえる。

 

涼しくはない。

 

だが、吹き抜ける風は気持ちよい。

 

お参りの人は誰もいなかった。

 

木々の葉が風に揺られる音がする。

 

鳥たちがさえずっている。

 

(なんて静かなんだろう)

 

墓石を拝見しながら、なんとなく歩く。

 

(鳥や虫たちは、墓石をどのようにみているのだろうか)

 

フッと考えてしまった。

 

人にとっては特別な石である。

 

思いを込めて手をあわせる石造である。

 

(あれっ?)

 

墓地には綿が飛んでいなかった。

 

 

お釈迦様のお言葉です。

 

『生きとし生ける者どもは死ぬであろう。生命は終には死に至る。かれらは、つくった業のいかんにしたがっておもむき、(それぞれ)善と悪との報いを受けるであろう。悪い行いをした人々は地獄におもむき、善いことをした人々は、善いところに生まれるであろう。それ故に、善いことをして、来世のために功徳を積め。功徳は、あの世で人々のよりどころとなる』

 

【岩波文庫 ブッダ神々との対話 中村元先生訳P208】

 

ありがとうございました。