幕張の近くで法要をお勤めした。
(せっかくだから)
読経後は寺に戻るだけである。
ここまで来たのだ。
ならば千葉の海を眺めなくてはもったいない。
京葉道路、千葉街道、東関東自動車道と順に横切る。
海岸沿いの道に突き当たったならば右折する。
(どこかに車をとめられるところはないか)
進行方向左側に意識を向ける。
しばらく進むと小さな案内板がめにとまった。
「習志野市海浜霊園」と書かれていた。
(どんなところなのだろう)
気にかかる。
さっそく駐車場に車をとめた。
小さな橋を渡り入口に向かう。
(いいにおいだ)
あたりに漂う潮の香りが心地よい。
そのまま霊園にお邪魔する。
綺麗に区画されている墓地だった。
比較的最近に開かれたようにも感じられた。
霊園内を少々歩いてみる。
各お家の思いがこめられた墓石を拝見する。
(あれっ?)
すると、あるお墓の竿石が目にとまった。
アルファベットが刻まれていたのだ。
(キリスト教徒のお宅なのだな)
ゆえに、一瞬、そうおもった。
ところが、脇に目を向けると卒塔婆が建っている。
仏教徒のお宅だったのである。
(頭がかたいな……)
私の考えは凝り固まっていたようだ。
さらに奥へと進む。
波の音がはっきりときこえてきた。
最も海に近い場所へ行く。
そこは合葬墓となっていた。
美しくデザインされた立派な墓所だった。
その先は海だ。
テトラポットに波があたる。
砕けてしぶきとなる。
それが風にのりこちらまで飛んでくる。
まさに海浜霊園である。
夕方になれば海越しに西へ沈む夕日がみえるのかもしれない。
西の彼方に沈む太陽をみることは、往生浄土をかなえる修行の一つである。
ご先祖さまを偲び、西方極楽浄土に思いをはせる。
娑婆を生きる我々には大切な行いだ。
各地には素晴らしい聖域が多数ある。
こちらも、とても素敵な霊域であった。
金峯山の巫女さまが詠まれた歌のご紹介です。
『十万億の国々は 海山隔てて遠けれど 心の道だになほければ つとめて到るとこそ聞け』〈この世から十万億の国々を過ぎて致極楽浄土は、海山を隔てて遠いけれども、心の道さえ正しくて、仏事に励めばすぐ翌朝にでも行き着けると聞いている〉
【角川文庫 ビギナーズクラシックス日本の古典 梁塵秘抄 後白河院・植木朝子編P46】
ありがとうございました。