久しぶりに散歩をしてみた。
爽やかな天気がその気にさせてくれた。
普段は、無目的に散歩をすることはない。
何かのついでに散歩をしている。
だから、今回はどの方向に進むべきかまず迷った。
「う~む」
門を出るだけでも大変である。
しばらくなやんだ。
そして、まずは北へ向かうことにあした。
頭の上を南から北へ鳥が飛んでいったからである。
歩きながら考えた。
「あまり歩いたことのない道を行ってみよう」。
いつもの知った道から脇道に入る。
「行き止まりかもしれない」
そう思いつつも進んでみる。
案の上、引き返すことが何度もあった。
「あれっ」
そんななか、初めて通る道なのに見覚えのある場所が一箇所あった。
立ち止まって前後左右を見返してみる。
「そうだ!」
毎日平日の夕方に放送されている刑事ドラマにでてくる小道だった。
細い階段を降りていくと左側に小料理屋さんがある。
あの風景だ。
私は、てっきり神楽坂だと思っていた。
実際は、赤坂だったようだ。
少し嬉しくなってきた。
急に頭の中にはドラマのオープニング曲が再生され始めた。
そういえば、ドラマでは池のある公園がよく映る。
警視庁が見える、小高いところにある公園だ。
音楽と共にイメージが湧いてくる。
「そう遠くはない」
行ってみることにした。
なんとなく場所のあたりはついている。
おそらく車では頻繁に近くを通っている。
山王神社の脇を周り、衆議院会館に挟まれた急坂を登る。
続いて、国会議事堂の脇から正面へと過ぎて信号を渡る。
到着だ。
二十分くらいはかかっただろうか。
緑が多く気持ちのよい公園である。
スーッと通り抜けていく涼しい風は、熱くなった身体に心地よい。
あの池もすぐにわかった。
ただ、思っていたよりはコンパクトな池でした。
鳥の暗示に従って歩き始めたのは正解だった。
ワクワクする散歩だった。
それにしても、実物の小道や池は映像から受ける印象とは随分とことなっていた。
知識で得たものと、現実の違いにも似ているのだろうか。
ちなみに、私は浅はかな人間である。
写真でみたり、人にきいたり、本で読んだりすると、すぐに知ったふうになってしまう。
注意しなければいけない。
つぎにドラマをみるのが待ち遠しい。
今までとは違った感覚で楽しめそうである。
お釈迦さまの御教えに、以下のお言葉があります。
『まことであるものを、まことであると知り、まことではないものを、まことではないと見なす人は、正しき思いにしたがって、ついに真実に達する』
【岩波文庫 ブッダ真理のことば・感興のことば 中村元先生訳P11】
ありがとうございました。