焦り | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

「芝公園」から高速道路に乗った。

 

永福町付近の連続カーブを超える。

 

高井戸を過ぎ中央高速道路へ入る。

 

三鷹料金所を過ぎる。

 

なんとなく後ろが気にかかった。

 

バックミラーを確認する。

 

大きなトラックが急激に近づいてきていた。

 

まもなく私の横を走っている乗用車の真後ろに来た。

 

ピタリとつけた。

 

「危ない」

 

そう思いつつ、私は左側車線を走り続けていた。

 

しばらくすると、乗用車は左側に車線を変更してきた。

 

トラックに気がついたようだ。

 

一方、トラックはさらにスピードを上げた。

 

あっというまに走り去っていった。

 

何かの事情で急いでいたのかもしれない。

 

乗用車もたしかに遅かった。

 

追い越し車線をゆっくりと走るのはよくない。 

 

トラックがイライラするのもわからなくもない。

 

しかし、車間距離が無いほど接近するのは危険である。

 

とりあえず、事故にならなかったことだけはよかった。

 

私が言うのもなんだか……。

 

ちなみに私は、ゴールド免許である。

 

免許取得以来、無事故無違反の優良ドライバーである。

 

……、ではなかった。

 

二度の違反が記憶にのこる。

 

一度目はお台場付近を走っていたときだ。

 

道に迷いさまよっていたのだ。

 

もう二十年以上前のことである。

 

お台場は、現在のように賑わってはいなかった。

 

開発を行っている途中で、閑散としていた。

 

夕暮れだったので辺りは薄暗くなっていた。

 

人の気配もない。

 

ほかの車もいない。

 

周りにあるものは、電気の消えた倉庫と山積みのコンテナだけである。

 

心細くなってきた。

 

「はやく帰りたい」

 

ところが意に反して戻る道をみつけられない。

 

信号はあるものの右折や左折の出来る道がない。

 

かりに右左折しても、その先はコンテナ置き場である。

 

関係者以外立ち入り禁止の看板が大きく掲げられている。

 

「どうしよう」

 

ますます落ち着かなくなる。

 

「そうだUターンすればいい」

 

とっさにハンドルを目一杯切った。

 

「前の車とまりなさい」。

 

サイレンが後ろで光っていた。

 

「Uターン禁止の標識がみえなかったのかな」

 

指摘を受けてしまった。

 

二度目は島根でのことだった。

 

所用で出雲の神社に行った。

 

用事を済ませ帰路につく。

 

裏通りから、国道九号線へ出たかった。

 

ところが、慣れない土地である。

 

またもや道に迷ってしまった。

 

地図で予習はしていた。

 

それでも、自分の位置を見失った。

 

だんだんと不安になってくる。

 

早く国道までたどり着きたい。

 

思わずアクセルを踏んだ。

 

「前の車とまりなさい」。

 

パトカーに呼び止められた。

 

「三十キロ制限ですよ」

 

指摘を受けてしまった。

 

もちろん、どちらの違反も罰金を払った。

 

若かったこともあり、とても痛い出費だった。

 

ただ、その分学ぶこともあった。

 

焦ると周りが見えなくなる。

 

すると、人様に迷惑をかけることとなる。

 

きれいごとではない。

 

心底感じたのである。

 

以来、言い聞かせている。

 

「焦ったときこそ慎重に」

 

  

お釈迦さまの御教えに、以下のお言葉があります。

 

『妄執の消滅を求めて、怠らず、明敏であって、学ぶこと深く、こころをとどめ、理法を明らかに知り、自制し、努力して、犀の角のようにただ独り歩め』

 

【岩波文庫 ブッダのことば 中村元先生訳P22】

ありがとうございました。