お寺の集まりに出かけようとすると、本堂の横から鳥の激しい鳴き声がしてきた。
「なんだろうか」、と確かめに行く。
胸が白く、羽の先端がやや青い鳥がいた。
「オナガ」のひな鳥のようだった。
さらに近づいていくと、警戒して逃げようとする。
しかし、羽をバタバタとさせるも、私の膝の高さまで飛びあがるのがやっとだ。
とても遠くまで飛んで行ける状態ではない。
何かの拍子に巣から落ちてしまったのか、カラスにでも攻撃されたのか。
いずれにしても、このままでは猫などに襲われてしまう。
かわいそうだが、無理やりつかまえることにした。
手にしてみると、傷はないようである。
まずはひと安心だ。
でも、これからどうすればいいのかわからない。
それでも、まずはこれ以上暴れることのないよう、暗がりをつくることにした。
倉庫から段ボールとりだして、急いで籠をつくる。
下が堅いと負担がかかるかもしれないので、新聞紙を切り裂いて敷き詰める。
念のために、小さなお皿に少しだけ水を張って置いておく。
とりあえずここまの応急手当で、お世話は一時中断だ。
これ以上遅くなると、集会に遅刻してしまう。
さて、会議の中休みに、「さっきは随分息が上がっていたけれども、何かあったの」と、友人のお坊さんに話しかけられた。
一連の事情を話し、「でも、これからどうしていいのか」と嘆いた。
すると、先輩のお坊さんが、「よかったら俺が面倒見てあげるよ」と声をかけてくれた。
海水魚、淡水魚、インコ、ハムスター、カブト虫などなど、様々な生き物を飼育している方である。
大変有り難かった。
会議を終えると、急いで自坊に戻り、先輩のお寺へ行く。
「この鳥なんですけれども」と段ボールを開ける。
先輩は、「うん、元気そうだ。飛べるようになるまであずかるよ」と優しくヒナを抱えた。
奥さまも様子を見に来た。
そして、「お坊さんにみつけてもらえたのがよかったのかもよ」と、ヒナに話しかけた。
「なんでだよ」と先輩が声をかけると、「だって毛が(怪我)なし、でしょ」と真顔で答えていた。
先輩と顔を見合わせて苦笑してしまった。
後日、ひな鳥は無事に飛び立ったそうである。
「観無量寿経」に、以下のお経文がございます。
『宝池の中にある摩尼宝珠から金色の光明が放たれている。この光明が変現して百宝色の鳥となり、鳥の鳴き声は調和がとれて美しくみやびやかである。この鳥の声は法を説き、仏の功徳を心に念じること、仏法が勝れていることを心に念じること、和合して修行する人々の功徳を心に念じることを讃歎する声として聞かれる』
【浄土宗勤行の解説 村瀬秀雄先生著p280】
ありがとうございました。