では、実際に楽天に持続的競争優位性があるかどうかみていきたいと思います。
楽天はEC事業、金融事業、トラベルエンターテイメント事業、ポータルメディア事業、その他、と5つの事業本部に分かれています。
まずはじめにEC事業について見ていきたいと思います。
EC事業というのは5つの事業本部に分かれていますが、ここではECのノウハウがつまった楽天市場に焦点を当ててみていきたいと思います。
楽天市場はインターネットショッピング業界の中では後発です。しかし、今では、出品数、出店数ではダントツNO1の地位を確立しています。
では、この競争優位性を楽天市場はこれからも築いていけるのか、資源というものに着目して説明していきます。
それでは、まずどうやって楽天がNo1の地位を築いたのかその要因をみることから始めます。
成功の要因1 安さ
楽天市場が存在する前のインターネットショッピングの出店料は、50~60万。しかし楽天市場は開始時の出店料が月額5万円という破格の値段でした。この安さに飛びついたのがモノは良くても流通・販路を構築できず全国展開をあきらめていた中小店舗です。楽天市場は安さにより、今まで眠っていた顧客を掘り出すことに成功しました。
成功の要因2 システムの使いやすさ
楽天ではRMS(Rakuten Merchant Server)という独自のシステムを築きました。これはネット上に店舗を開設する際、ワープロとマウスの操作ができればソフトのガイドに沿うだけで簡単にできてしまいます。
成功の要因3 サポートサービスの実施
楽天は「楽天大学」を設置し、出店店舗の成功・失敗事例を分析しノウハウを体系化した講座を開いています。
楽天市場では店を開く前、そして開いた後も出店者へのサポートをしっかりしています。
以上3点を強みにすることによって楽天は次のようなサイクルをつくり上げました。
まず、出店者にとって価格、システム、サポートが魅力的⇒店舗が集まる⇒店舗数・出店数の増加⇒ということは楽天市場に行くことで顧客は欲しいものにめぐり合う確率が高くなります。そうして、顧客が増加⇒集客力の高いサイト⇒出店数の増加⇒・・・・・というようにプラスのサイクルができるのです。
こうして楽天はこのように単純にみえる戦略でNo1の地位を確立しました。
つまり、楽天は安さ、サポートサービス、独自のシステムが時間と経験を積み重ねることによって顧客(この場合で言うと店舗)の信用やブランドという無形の資源をつくり上げることに成功したのです。この資源がいかに持続的競争優位性をもっているかを確かめるためにVRIOというフレームワークを使ってみたいと思います。
VRIO分析とは、ある資源が競争優位性をもたらすかどうかは、資源の価値(value)、希少性(rareness)、模倣可能性(imitility)の3つの要因によって決まるとされ、さらにこの3つの要因に組織(organization)を加えた4要因の頭文字をとりVRIOフレームワークと呼ばれる。
信用やブランドという無形資源は社会や経済状況によって変化しうるものではないので価値と希少性はあります。またこれは時間をかけて形成されたものであるので模倣困難であることはいうまでもありません。
つまり楽天のEC事業はVRIO分析の「V」、資源に価値があるか、「R」の資源に希少性があるか、「I」の模倣は困難か、の3つには当てはまっていると言えるでしょう。
では、VRIO分析の「O」の組織が資源の力を引き出しているか、について検証していきたいと思います。