学園太平記G (33) | 犬小屋チャンプルー

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犬己那池の、オリジナルの小話やイラストをもさもさ更新するブログ。
最近は、歴史創作(南北朝~戦国時代)がメインになっています。

※注意※
この話はフィクションです。
歴史創作・パロディが苦手な方は、撤退してください。






それでも大丈夫な方のみ、以下からどうぞ。↓





義弘の案内で尽志分校に向かおうとした俺は、突如降りだした雪のせいで遭難してしまった。
とりあえず、近くにあった水鳥の観察小屋に避難する。
小屋は狭く簡素な造りだったが、雪風をしのぐには十分だった。

「味方に連絡はした。――が、この天気ではさすがに救助に来るのが遅れるらしい」

「そう……ックシュ!」

スマートフォンの通話を切った途端、隣から小さなくしゃみが聞こえた。
見れば、義弘の体がかすかに震えている。

「寒いか? こっちに来い。二人で寄り添った方が温かいだろう」

そう言って、俺は彼女を抱き寄せる。
対する義弘はこちらを見上げると、はにかむような笑顔を浮かべた。

「カムサハムニダ。アナタ、やっぱりワタシのチョンセンヨンブンネ」

「なぁ、出発前にも言っていたが、その『チョンセンヨンブン』とはどういう意味なんだ?」

「韓国語で『運命の人』って意味。ワタシ、初めてアナタに会ったとき、まるで韓流スターみたいって思ったヨ。この出会いはきっと、韓流ドラマが好きなワタシのために、神様が与えてくれたものダって!」

「え、いや……それは……」

韓流スターに例えられるのは嬉しいが、さすがにそれは妄想が行き過ぎだろう。
しかし、一度火が付いたら止まらないのか、義弘の言動はますますヒートアップする。

「サランヘヨ、義満……」

迫りくる唇から紡がれた韓国語は、おそらく告白の言葉。
まずい、このままでは――!
脳内で警鐘が鳴り響くが、相手の雰囲気に呑まれてしまったのか、体は全く動かない。
やがて、唇と唇が重なりあう――寸前。

「義満様っ、ご無事ですか!?」

出入り口の方から飛んできた、懐かしい声。
呪縛が解けたようにそちらを振り返ると、雪景色を背に、懐かしい人影が立っていた。

「頼之――!?」

なぜ、どうしてお前がここに?
そう問いかけたいのに、驚きと安堵で声が出ない。
それでも、長年俺の執事を務めていた彼には十分伝わったようで、

「申し訳ありません。執事を辞めた身であるとはいえ、邸の者から貴方が遭難したと聞いた以上、居ても立っても居られなくなりまして」

そう言って困ったように微笑む癖も、昔のままだ。
俺は泣きたくなるのを堪えて、彼に礼を言った。

「――さぁ、外に車を待たせてあります。そちらの方も一緒に」

「ああ。行こう、義弘」

そこでようやく、俺は義弘の存在を思い出した。
彼女はというと、どうやら頼之の登場で我に返ったらしい。
先程まで熱っぽい眼差しで俺を見つめていたのが、今は険しい顔で頼之の方を睨んでいる。

「ムムム……これは、強力なヨンジョクの出現ネ。でもワタシ、負けないカラ!」

何を言っているのかわからないのは相変わらずだが。

――とにかく、頼之のおかげで、俺たちは無事救助されたのだった。

   ***

義満頼之に救助される。
史実では、大風が原因で義満の鎮西下向は中止されました。
ちなみに、ラストで義弘が言っていた韓国語「ヨンジョク」は、「恋敵」という意味です。


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