学園太平記 (139) | 犬小屋チャンプルー

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犬己那池の、オリジナルの小話やイラストをもさもさ更新するブログ。
最近は、歴史創作(南北朝~戦国時代)がメインになっています。

※注意※

この話はフィクションです。

歴史創作・パロディが苦手な方は、撤退してください。






それでも大丈夫な方のみ、以下からどうぞ。↓






一本の矢が、僕に向かってまっすぐに飛んでくる。

もう駄目だ。

かつての僕なら、すぐに諦めて目を閉じていただろう。

だけど、今の僕は違う。


「僕は、死ねないっ!」


無理矢理上体をひねって、気合いで矢を避ける。

目標を見失った矢は、背後の木に突き刺さった。

今度は僕の番だ。

木から矢を抜き取ると、お返しとばかりに、思い切り投げる。

狙いはもちろん、ヨシオキくん。


「くっ!」


顔に向かって飛んできた矢を、ヨシオキくんは頭を傾けて回避しようとする。

けれど避けきれず、鏃が彼の左耳をかすめた。

その衝撃で、天狗面を固定している紐がプツリと切れる。

ずり落ちた面の下から現れた、彼の素顔は――。


「き、君は……」


驚愕のあまり、僕は命を狙われていることも忘れて、彼に歩み寄ろうとする。

もっと近くで、ちゃんと顔を確認したい。

だけど、ヨシオキくんは天狗面を手で押さえて、再び顔を隠してしまった。

さらに、


「恩人が危機に陥っている。加勢するぞ!」


今まで義助くんにかかりっきりで、事態を静観していた新田組が動き出した。

どうやら、義助くんを助けたことと僕を攻撃したことから、ヨシオキくんを味方だと判断したらしい。


「兄上。ここは一旦退いて、態勢を立て直しましょう」


呆然とする僕の前に、直義が進み出て意見を述べる。

和解の交渉は決裂。

その上、突如として謎の敵が出現したんだ。

味方には不利な状況だった。


「でも、」


ヨシオキくんのことが気になって、僕は逡巡する。

そうこうしているうちに、押し寄せる新田組に遮られて、ヨシオキくんの姿は見えなくなってしまった。


「悩んでいる暇はありません。師直、兄上を!」


「はいはい。わかりましたよっと」


直義の命令に従って、師直が面倒くさそうに僕を担ぎ上げる。

総大将である僕が退却する様子を見て、味方も次々と下山し始めた。

師直の肩の上で揺られながら、僕は先程のことを思い出す。

天狗面の下から現れたヨシオキくんの素顔。

一瞬の間だったけれど、左眉の辺りに傷跡があるように見えた。

見覚えのある傷が。


「あの傷跡――まさか、義貞くん?」


   ***


尊氏ヨシオキの素顔に驚愕する。

史実では、義助病死後、北朝方の細川頼春が伊予の南朝方を攻撃して、勝利を収めています。


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