※注意※
この話はフィクションです。
歴史創作・パロディが苦手な方は、撤退してください。
それでも大丈夫な方のみ、以下からどうぞ。↓
一本の矢が、僕に向かってまっすぐに飛んでくる。
もう駄目だ。
かつての僕なら、すぐに諦めて目を閉じていただろう。
だけど、今の僕は違う。
「僕は、死ねないっ!」
無理矢理上体をひねって、気合いで矢を避ける。
目標を見失った矢は、背後の木に突き刺さった。
今度は僕の番だ。
木から矢を抜き取ると、お返しとばかりに、思い切り投げる。
狙いはもちろん、ヨシオキくん。
「くっ!」
顔に向かって飛んできた矢を、ヨシオキくんは頭を傾けて回避しようとする。
けれど避けきれず、鏃が彼の左耳をかすめた。
その衝撃で、天狗面を固定している紐がプツリと切れる。
ずり落ちた面の下から現れた、彼の素顔は――。
「き、君は……」
驚愕のあまり、僕は命を狙われていることも忘れて、彼に歩み寄ろうとする。
もっと近くで、ちゃんと顔を確認したい。
だけど、ヨシオキくんは天狗面を手で押さえて、再び顔を隠してしまった。
さらに、
「恩人が危機に陥っている。加勢するぞ!」
今まで義助くんにかかりっきりで、事態を静観していた新田組が動き出した。
どうやら、義助くんを助けたことと僕を攻撃したことから、ヨシオキくんを味方だと判断したらしい。
「兄上。ここは一旦退いて、態勢を立て直しましょう」
呆然とする僕の前に、直義が進み出て意見を述べる。
和解の交渉は決裂。
その上、突如として謎の敵が出現したんだ。
味方には不利な状況だった。
「でも、」
ヨシオキくんのことが気になって、僕は逡巡する。
そうこうしているうちに、押し寄せる新田組に遮られて、ヨシオキくんの姿は見えなくなってしまった。
「悩んでいる暇はありません。師直、兄上を!」
「はいはい。わかりましたよっと」
直義の命令に従って、師直が面倒くさそうに僕を担ぎ上げる。
総大将である僕が退却する様子を見て、味方も次々と下山し始めた。
師直の肩の上で揺られながら、僕は先程のことを思い出す。
天狗面の下から現れたヨシオキくんの素顔。
一瞬の間だったけれど、左眉の辺りに傷跡があるように見えた。
見覚えのある傷が。
「あの傷跡――まさか、義貞くん?」
***
尊氏、ヨシオキの素顔に驚愕する。
史実では、義助病死後、北朝方の細川頼春が伊予の南朝方を攻撃して、勝利を収めています。
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