※注意※
この話はフィクションです。
歴史創作・パロディが苦手な方は、撤退してください。
それでも大丈夫な方のみ、以下からどうぞ。↓
その頃、南校では――
「なんっじゃこりゃああああ!?」
丸坊主になった桜並木を見て、親房が頭を抱えていた。
枝を折られた幹には、「貴方たちにはもったいないので、桜は全部頂いていきました。 怪盗セイント☆どーよ」と書かれた短冊がぶら下がっている。
この壮大でふざけた犯行――間違いなく、北校の佐々木道誉の仕業だ。
「おのれ……この度の入学式は、義良様が次期校長に就く発表の場でもあるのに……!」
そのような大事な日なのに、桜の花どころか花弁1枚もないとは、寂しすぎる。
この入学式が、自分が新教頭として執り行う初の仕事なのに……。
親房は俯いて、悔しさに拳を握りしめる。
「どうしたんです、親房先生。こんな日にそんな顔してたら、折角のお祝いムードが台無しですよ」
振り返ると、真新しい学ランに身を包んだ少年が立っていた。
少し大人びた顔つきなっているが、親房には見慣れた顔だった。
「正行君か。どうしてここにいるんじゃ?」
制服からわかる通り、彼は今年で中学1年生になったばかり。
高校の入学式に用はないはずだ。
いぶかしむ親房に対して、正行はさも当然とばかりに答えた。
「決まってるでしょう、南校の応援に来たんですよ。中学生でも、俺は楠木正成の息子ですから」
「……ありがとう。心強いものじゃ」
親房は眼鏡を外して、嬉し涙をぬぐう。
正成、義貞、そして顕家――昨年は多くの味方が戦線離脱していった。
この桜のように、我が南校派はただ散りゆくのみの運命と思っていたが。
春の訪れとともに、新たな戦力が芽を出し始めたのだ。
「それと、義助先輩から祝電です。――新入生へのお祝いとして、我が軍の勝報を捧げます、と」
「おお、真か!」
潜伏中の義助が、北校派の高経を撃退した。
正行の報告に、親房の胸は躍る。
まだだ、まだ我々は戦える。
大切なのは折れぬ心だ。
ふと、桜の幹に小さな新芽が顔を出しているのを見つける。
萌黄色のそれに手を触れて、親房は決意を新たにした。
***
正行の参戦と、義助の勝報、そして親房の決意。
史実における後村上天皇の即位あたりの話になります。
結局、南校の入学式は桜なしで行われましたが、正行たちのおかげで活気づいたようです。
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