※注意※
この話はフィクションです。
歴史創作・パロディが苦手な方は、撤退してください。
それでも大丈夫な方のみ、以下からどうぞ。↓
その後、ひかりは病院に運ばれたが、間もなく息を引き取った。
死因は、過労。
昼は家事とパートに追われ、夜は遅くまで内職に励んだ結果だった。
「すまない、ひかり……俺が、俺が北条グループの傘下に入っていれば、こんなことには……!」
ベッドに横たえられた妻の亡骸を前に、朝氏は号泣した。
傍らに立つ船田義昌たち社員に構うことなく。
普段は息子たちに「男は人前で涙を見せてはならない」と教えているが、今回は別だ。
自分の「下らないプライド」が、愛する妻を死に追いやったのだ。
その上、仕事がうまくいかない苛立ちを彼女にぶつけたりして。
なぜ、もっとひかりを労わってやれなかったのだろう。
彼女は自分にひどいことを言われても、涙一つ見せず、文句一つ言わずに受け止めてくれたのに。
「結局、結婚指輪も買ってあげられなかった……」
後悔に濡れた声で、朝氏は呟く。
その大きな手に握られているのは、瑠璃色の元結。
ひかりが生前いつも身につけていた物だ。
彼女と結婚した当初、朝氏は貧しくて結婚指輪を買う余裕がなかった。
ひかりも、自分から物をねだるような性格ではなかった。
だがある日、朝氏は見てしまった。
彼女が居間で、一枚のチラシをじっと見つめているところを。
スーパーの安売りのチラシに交じっていたそれは、宝石店のチラシ。
美しい瑠璃の指輪の写真に、彼女の視線は注がれていた。
その翌日、朝氏はひかりに、瑠璃色の元結を贈った。
「いつか新田組が繁栄したら、本物の瑠璃の指輪を贈る」と約束して――。
しかし、その約束はもう果たせない。
「『尊厳』と『崇高』――」
「何?」
朝氏は泣きはらした目で、声のした方向を振り返る。
そこには、義昌の慈愛に満ちた顔があった。
「瑠璃の宝石言葉ですよ。奥様はきっと、『源氏組の誇り』を守り通した社長を恨んでなどいません。そして、これからもそうあり続けてほしいと願ってらっしゃるはずです」
「……そうか」
ならば、自分は己の信じる道を突き進むのみ。
この、何色にも侵されぬ気高い青のように。
朝氏は元結を握りしめた手の甲で目をこすると、妻の亡骸に頭を下げた。
「今までありがとう、ひかり。これからはゆっくり休め」
そんな朝氏の言葉に応じるように、ひかりは安らかに眠っていた。
***
ひかりの死と、形見の元結。
彼女の死後は、義昌が母親代わりに義貞と義助の世話をしました。
本当は、朝氏に対する義昌の恋心とかも書きたかったのですが……。
↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ