学園太平記 ~貞氏の真意編~ | 犬小屋チャンプルー

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犬己那池の、オリジナルの小話やイラストをもさもさ更新するブログ。
最近は、歴史創作(南北朝~戦国時代)がメインになっています。

※注意※

この話はフィクションです。

歴史創作・パロディが苦手な方は、撤退してください。






それでも大丈夫な方のみ、以下からどうぞ。↓






その日の夕方、貞氏は北条グループ本社の社長室にいた。


「――ご命令の通り、今回も新田組への妨害は成功しました。今日の報告は以上です」


貞氏の正面には、豪華な椅子に座る一人の男。

彼こそが、北条グループの社長・北条貞時である。

その首にはネクタイではなく、緋色のチョーカーをはめている。

貞時が満足そうに頷く度に、チョーカーについたドッグタグがギラギラと揺れた。


「よし、この調子で妨害を続けろ。そして、新田組を潰すのだ」


「し、しかし、相手は下らないプライドで商機を逸するような奴です。私が手を下さなくとも、そのうち自滅するでしょう。そもそも、奴らを潰すことに何の利益が……」


突然の命令に、さすがの貞氏も戸惑う。

貞時の無茶振りはいつものことだが、新田組を潰すなど、いくらなんでもやり過ぎだ。


「利益か。利益ならあるぞ」


しかし、貞時の方はそうは思ってはいないらしい。

徐に社長椅子から立ちあがると、窓辺に歩み寄る。

窓の外では、真っ黒なビルの森へ真っ赤な太陽が沈もうとしていた。


「『北条に非ずは企業に非じ』――俺にとっては、北条グループに与さぬ会社に対する見せしめとなる。そして」


景色を眺めていたかと思うと、貞時は貞氏の方を振り返った。


「お前にとっては、ライバルを自らの手で葬り、自分こそが源氏組の遺志を継ぐ者であると、世間に認めさせる好機となる」


相手の整然とした説明に、貞氏は何も言うことができない。

そんな彼を乱暴に引き寄せて、貞時はその耳元に囁いた。


「新田組を潰せ、貞氏。そして俺に、お前の忠誠心と源氏組の誇りを見せておくれよ」


ワイシャツの襟を掴まれているせいで、清子が結んでくれたネクタイが緩む。

その下から、貞時と同じデザインのチョーカーが顔を出した。

三つ鱗の紋が刻まれたドッグタグが、夕日を受けてギラギラと輝く。

その眩しさと屈辱に、貞氏は顔をしかめた。

しかし、抵抗することはできない。


「――承知しました」


できるのは、貞時の命令に従うことだけ。

足利組の発展のため、そして愛する家族を守るために、貞氏は「源氏組の誇り」を捨てて「北条グループの犬」となったのだ。


   ***


今回は「新田家の事情編」のさらに番外編(!?)で、貞氏が主人公です。

高時の父・貞時も初登場!

ちなみに、貞氏がネクタイを乱されるのを嫌うのは、清子が結んでくれたものだからと、もう一つ、北条に服従している証であるチョーカーを見られたくないからです。

次回からはまた、「新田家の事情編」に戻ります。


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