日本茶海の東に浮かぶ名菓ツ国。
和菓子の住まうこの国にも、師走には町にジングルベルが流れ、木々には色とりどりのイルミネーションが灯る。
そんな中、上野国国境付近の清月城では。
「12月はクリスマスで酒が飲めるぞ~♪」
赤鼻のトナカイも裸足で逃げ出すほどの赤ら顔で飲んだくれているのは、国防軍10番隊隊長・華院天音。
ご機嫌で鼻歌を歌う彼女の後頭部に、副官の冷たいツッコミが突き刺さる。
「クリスマスはもうとっくに過ぎてますよ」
「うっ……過ぎても忘年会シーズンで飲み放題ではないか」
振り向き、なおも食い下がる華院隊長。
しかし、副官はどこまでも冷静だった。
「その前に、今年一年の仕事をすべて片付けてくださいね」
言うと同時に、机の上にドン、と書類の山が置かれる。
自分が今まで後回しにしてきた仕事の多さに、華院隊長は改めてたじろいだ。
「うぅ……それを忘れるための忘年会だろうが!」
「忘年会とは、その年の苦労を忘れるために催される宴のことです。勝手に意味を変えないでください」
「分かった分かった、広辞苑片手に言うな」
じろりとこちらを睨む副官に、隊長はこれ以上何かを言えば広辞苑を投げつけられかねないと判断する。
おとなしく机に向き直った彼女だった、が。
「では、仕事前の景気づけに一杯……」
「た・い・ちょ・う(怒)」
「みぎゃーーーーーーっっ!!」
世間が忘年会でにぎわう頃、清月城では謎の破壊音と悲鳴が響いていた。
***
久しぶりに『Sweet Wars』の話を書きました。
絵がまだ『ハニ小』のしかないので、そのうち『Sweet Wars』の絵も描いてアップしたいです。