「あー楽しかった」
「あの子も満足してくれたようデスし、よかったデスね」
三条邸を出発したソリは、意気揚々と寒空へ駆け上っていく。
「よぉし、この調子でどんどん配るぞー!」
元気一杯に宣言して、少女サンタは各家にプレゼントを配っていった。
以後は待ち伏せやセキュリティに引っかかることなく、作業はスムーズに進んでいく……かに見えた、が。
「ココでラストです」
そう言ってトナカイが足を止めたのは、普通の一軒家の門前だった。
辺りはしんと静まりかえっている。
この様子なら、最後はトラブルなく締めくくれそうだ。
心中ホッとしながら、少女サンタは家の中へ入っていった。
「お邪魔しまーす」
律儀に挨拶して入ったのは、何の変哲もない子ども部屋。
小さな学習机に、整頓された本棚。
唯一、部屋の隅のベッドにつるされた靴下が、クリスマスらしさを演出している。
「手紙にはなんて書いてあるのかしら?」
ワクワクしながら、靴下の中の手紙を開く。
そこには、習いたてのひらがなで、
『でばん が ほしい』
「……」
ゆっくりと、ベッドの中の少年に目を向ける少女サンタ。
その幸薄そうな寝顔に、彼女は思わず納得してしまった。
「……でも、こーゆーのは私じゃなくて作者に頼まないとねぇ」
自分の能力外の願いに、うーんと頭をひねる少女サンタ。
そうこうしているうちに、窓の外が明るくなってきた。
時間がない。
少女サンタは、もう一度少年の顔を見やると、何かを決意したような表情で部屋を出ていった。
***
今日はクリスマスイブですね!
聖夜にふさわしく、最後は主人公・ヨウスケ君です。
はたして、彼の願いは叶うのか……?