サンタ苦労物語 その4:vsブラックお嬢様 | 犬小屋チャンプルー

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犬己那池の、オリジナルの小話やイラストをもさもさ更新するブログ。
最近は、歴史創作(南北朝~戦国時代)がメインになっています。

カガク少年、ロマンチック少女と、2つの困難を潜り抜けた少女サンタ。

そして今、3人目の家へとソリはむかう……。

「うひゃー、大きな家……」

目の前の豪邸に、少女サンタは思わずそう呟いた。

門前にソリを止めているが、そのずっと向こうに玄関がある。

間を埋める広い庭には、色とりどりのイルミネーションが煌いている。

少女サンタはしばらくその景色に見とれていたが、やがて本来の目的を思い出すと、トナカイに言った。

「とにかく、ここからじゃ遠くて部屋の中に入れないわね。出来るだけ気づかれないように窓に接近して頂戴」

「了解」

鈴の音を潜めながら、ソリが門の上を通過した、そのとき。

「侵入者発見! 直ちにひっ捕らえよ!」

けたたましいサイレンとともに、黒い制服を着た人々がどこからともなく湧いてくる。

「何よ、また待ち伏せ!?」

慌てて逃げようとUターンするソリに、上から網がかぶさる。

自由を失ったソリはゆっくりと地上へ落下し、黒服は蟻のごとくそれに群がった。


「やっと来ましたね。もう1日ぐらい待った気がしますが」

捕まった少女サンタとトナカイに、少女は穏やかに微笑みかけた。

2人が連れてこられた部屋は、子ども一人が使うには十分すぎる程の広さである。

そこに、巨大なツリーやらプレゼントの山やらが置かれていた。

一通り辺りを見回してから、少女サンタは話を切り出す。

「……で、アナタはプレゼントに何が欲しいのかな?」

「何も」

「え!?」

予想外の答えに、驚きの声を上げる少女サンタ。

少女はため息をつくと、部屋の隅にあるプレゼントの山を見やる。

「だいたい、人からこんなにプレゼントをいただいているのに、これ以上欲しいものがあるとでも?」

「そーデスよ。それくらい、ちゃんと観察していれば分かるコトでショーが」

同意するトナカイに、少女は嬉しそうに微笑む(なぜかトナカイがしゃべる事には疑問を持たずに)。

「あら、そちらのトナカイさんはよく分かってらっしゃいますね」

「こんな人でスミマセン。しかし、彼女は今回が初仕事……ここは何とぞ希望を述べて下サイまセンか」

「そうですねぇ……」

「ちょ、私を差し置いて話を進めないでよ!」

2人の会話に、少女サンタが慌てて突っ込んだ。

「では、あえて欲しいものを1つ」

顎に手を当て、しばらく考え込んだ後、少女が口を開いた。

「しばらくの間、私の話し相手になってください」

「それだけでいいの?」

再び驚きの声を上げる少女サンタの後頭部に、トナカイの角が突き刺さる。

トナカイは察していたのだ、聖夜を1人で過ごさざるを得ない少女の寂しさを。

それは物で満たされるものではない。

「ええ。貴女方の時間の許す限り、お願いできませんか」

「オッケー☆ じゃあ、この私の華麗な仕事ぶりを」

「デハ、この仕事における私の苦労話を一ツ」

「それは面白そうですね。一体どのような苦労を?」

「ちょ、私ハブ?!」

こうして、少女――ミヤビの広すぎる部屋に、しばらくの間笑い声が満ちた。


 ***


昨日は漫研の忘年会で更新できず(汗)。

お待たせしました、今回はミヤビちゃんです。

腹黒お嬢様の会話は書いてて楽しいv