2017年世界選手権大会「Hope and Legacy」 は
歴史に残るプログラム
当時、この演技をテレビで観ていた私は、ショート「レッツゴー・クレイジー」が
5位発進で迎えたフリーでしたから…正直、演技の後半のジャンプのコンビネーション成功するまでは不安でした。
羽生君 SP「レッツゴー・クレイジー」演技後、こんなふうに振り返ってました。
「(SP後は)追い込まれたというより、"自信喪失"といったほうが近いですね。ミスの原因がすぐに見つかって『ここがダメだったから、次はこうしよう』というのがわかっていれば、多分そこまで落ち込まなかったのかもしれないですけど、やはり5位の結果も含めて、自分がどうしていい感覚の中にも関わらずミスをしてしまったのか、(演技の)最後までわからなかったです......」
調子が良かっただけに、”どうすればいいのかわからなかった”と、首を横に振りながらの言葉を覚えています。
ブライアンコーチはあまり心配しておらず、ユヅは『かつてないほど好調』『今日はパーフェクトを狙い過ぎて少しサルコウに入るスピードが慎重になっただけかもしれない。』と話していました。
ショートは、サルコーのミス以外は本当に完璧でしたからね。
ショートが終わった瞬間、会場がどよめいていました。
ジャンプのミスがあろうが、会場中を興奮させたのは、
ヒャ~ 足が長っ
これは、NHK杯かな?
さて!「Hopeand Legacy」へ話を戻します。
「ヘルシンキの奇跡」
羽生結弦を語る上で欠かすことのできないプログラム「Hopeand Legacy」。
史上初めてショート5位から優勝を飾った「ヘルシンキの奇跡」は、いまなおファンの間で語り草となっています。
羽生君の美しさも表現されている動画です。
書き起こして紹介していこうと思います。
3回くらいに分けて、では第1回
この日も、好調のシンボル(アンテナ)が凄い!
羽生選手はフリープログラム 「Hopeand Legacy」について 語っています。
2016から17のフリーは 、久石譲さんの「view of silence]
「Asian Dream Song」を組み合わせて「Hopeand Legacy」 という題名になりました。
「Hopeand Legacy」は自然を表現
「僕にしては珍しく笑顔で滑れる曲です。 僕はこれまで 真剣な顔をして苦しい表現をすることが多かったけど、今回は笑顔で滑れるのでとても好きです。
この曲に関しては自分の中で テーマが決まっていました。
何を表現したいかは 明白でした。 自分の感情だけを押し付ける作品にはしたくないと思っていました。 ジュニアの頃は、”音が聞こえなくても音が聞こえるような演技をしたい”と思っていました。 しかし今では独りよがりで押し付けがましい考えだと思っています。 音がなくては プログラムではない。音と共鳴しているからこそ 感じ取れるものだと思います。
この曲には 日本的なメロディー ラインがあり 風、木、 水 そういう自然を表現したい。 そういう意味では昨年のエキシビションの 「天と地のレクイエム」 につながるものです。
久石さんの曲が前面に出過ぎず、 包み込むような曲なので自分もその空間の一部として存在するくらいの位置付けでやりたい。
リンクの上にある風だったり、冷たさ だったり、 湿気とか 氷のしぶき そういったものと融合して、最終的に演技 になるのがベストだと思う。」
この頃かな、リンクの風を感じるようになった。観客からの気を意識するようになった、と。野村萬斎さんとの対談で多くを吸収してたよね。
「点数が上がらないプログラムを変更?」に同意せず
しかし 選手権の前に行われた四大陸選手権大会後、 羽生選手の周りの一部からは「静かな曲だから 表現をしっかり出さないと点数が上がらない。 という声も上がりました。 自分を押し出すのではなく、自然や 空間の一部として融合し その結果として 自分を表現するという 斬新な取り組みに対して、難解であると受け止める人もいましたし、 高得点を出し続ける羽生選手に対する奇妙なプレッシャー もあり得点が伸び悩むこともありました。 しかし 羽生選手はプログラムの変更に同意しませんでした。 そしてついにそのプログラムが完成した場所は、 森と妖精の国 フィンランドでした。
GPFや四大陸選手権は、後半からのジャンプが上手くいかなくて、演技後、悔しそうに”あとちょっと”の仕草をしていたことが印象的でした。
雑誌や記事にも「プログラム変更か?」などと書かれていましたね。
悪意とか善意が刺さります
大会で優勝した後、羽生選手は語りました 。
「このプログラムは希望と先人からの受け継いだものを表していて これは僕のスケート 人生みたいです。
僕を憎む人もいて、愛してくれる人もたくさんいる。 だから 悲しい時もあれば 幸せな時もある。 この2つの面を表しているのが このプログラムです。
僕の中で なんですけど、無意識の状態で跳べる感じになっていれば、冷静に風を感じたりとか、ちょっと えぐいこと言いますけど、眼球がどういう風に動いてどこを見ていて お客さんの視線がどこを向いていてどういう力が働いていて、自分はこうしていけば跳べるみたいな、すごい細かいところまで… お客様が何をしていて自分が無意識にどう動いているのか? 悪意とか善意とか全部伝わってきます。 全方向から、 なんか刺さりますよ。」(羽生結弦)
この、ゾーン体験の話し。
大会後インタビューでこれを聞いた宮根さんが、ものすごく驚いていた
…確かに、見透かされている感覚?凄いことをさらりと言ってのけちゃう。
日々の鍛練で研ぎ澄まされていく「もう一人の自分」かな。
羽生選手が語るこの感覚はまさに ゾーンに入った状態の一部とみなすことができます。 ゾーンの中で選手は通常よりもはるかに高いレベルの無意識の集中力を発揮し 、自分の動きや周囲の環境 さらには観客の存在までをも深く感じ取ることができます。 羽生選手が述べているように、風を感じ眼球の動きや 観客の視線を意識し、 自分の体がどのように動いているかを知覚する能力はゾーンにおける超集中状態の現れす。
この状態では意識以上に無意識の動き、 働きが 正確な動作 演技を通じて 演技を通じて 悪意 や善意のような微細な感情までもが伝わってきます。 これはスポーツの高いレベルで競う 選手にしか体験できない 非常に特別な感覚です。
そして「Hopeand Legacy」を振り付けした
シェイ・リーン・ボーンさんも羽生選手について語っています。
羽生君を表現するシェイ・リーン・ボーンさんの言葉も素敵です次回に紹介したいと思います
最後までお読みいただきありがとうございます。