8月から12月まで、5回連続で小名木善行先生による「関西倭塾」を開催します。
「倭塾」は小名木先生の私塾で、東京や名古屋などで開催されていますが、今回初めて関西での開催となりました。

 



プロジェクターから映し出される最初のスライドはアニメ「ワンピース」の仲間たち。その次に映し出されたものは「セーラームーン」。
 十七条憲法と創生の神々というテーマとは随分かけ離れたスライドで、この後どのように本筋に入っていくのだろうと皆さんは画面にくぎ付けです。


 昔のアニメや子ども向けのテレビでは、ヒーローは一人で悪と戦うという形がスタンダードでした。しかし、昨今は、「ワンピース」や「セーラームーン」のように、個々が特徴(個性)を持ち協力して悪を倒すという形が多く見受けられます。この戦いの在り方は、
① お互いが対等な関係である。
② 上下と支配の関係の敵。
③ 戦うときはみんなで戦う。
の3つの柱から成り立ち、実は古事記が書かれた時代にもすでに考えられていたものです。
科学が発展した現代でさえ、心に求めるものは、こうした古事記の時代に築かれてきた考え方なのかもしれず、「ワンピース」や「セーラームーン」は単なる人気アニメではなく、その裏側にある日本人の求める世界観を明確に現したものなのかもしれません。




また、私たちは簡単に「神話」といいますが、この「神話」には深い意味があり、日本人のアイデンティティとなるものです。小さな時からおとぎ話のように聞かされてきましたが、「神話」は江戸時代まで「神語」(かみがたり)といわれ、民族の在り方を教え伝えているものだったようです。

イギリスの歴史学者アーノルド・I・トインビー博士は「民族が滅びる3つの原則」として、
① 理想を失った民族は滅びる。
② すべてをの価値に置き換えて判断する民族は滅びる。
③ 12.、3歳くらいまでに民族の神話を学ばなかった民族は、例外なく百年以内に滅びる。


といわれていますが、今の日本を振り返ったとき、この3つの原則にあてはまっていると感じたのは私だけではないと思います。しかし、神話から何をどのように学ばねばならないのでしょうか。

そうした中で、今回は日本書紀のイザナキ・イザナミの国生みの神語(神話)をご紹介いただきました。
 イザナキ、イザナミは、天浮橋(あめのうきはし)に立ちオノゴロ島を作ります。その理由を、日本書紀では「豈国(あにくに)」と書いています。
日本書紀がいう「豈国」は、「喜びあふれる誰もが笑顔で楽しい国」を意味し、それが日本の国家の根幹となっているのです。
 政治だけでなく、社会の中において人々が議論をするには明確な目的があるはずです。どのような状況や環境にあっても私たちは「豈国」を目指し、政治議論を行い、企業、国家のガバナンスを整えなければ、真に豊かな国にはならないのだと思います。


お話しを聞き、「豈国」の持つ意味を教えていただいた時にまず思い出したのは、ブータンの国民の幸福度でした。豊かな精神性が国を掌り、国民の安寧を支えている、これは日本のあるべき姿なのではないでしょうか。
いつしか、理想を忘れ、金に重きを置き、民族の歴史「神語」を学ばなくなってしまった私たちはもう一度原点に立ち返り、「喜びあふれる誰もが笑顔で楽しい国」づくりに取り組み、未来の日本人に残すべきものがあるはずです。




そして、先生は律令体制についてもお話しくださいました。
学生時代には「律令制は、唐の制度に倣(なら)った」と教わりましたが、まったく違いました。
その内容をよく見ると、日本独自の考えが反映されています。まず、国家最高の存在として天皇がありますが、その天皇は政治権力を行使しません。どこまでも国家の最高権威という立場です。そしてその立場から、民を「おおみたから」としています。これは日本の古代から続く「シラス」を形にしたものです。それに対して唐の律令体制は皇帝などの最高権力者が民衆や領土を支配・所有するといった「ウシハク」の統治方法となります。すべての権力は、皇帝ただひとりに集約されています。この方法では、国は権力者によって政策が異なり、国の歴史がその都度途絶えていくことになります。
 世界で一番歴史の長い国は日本だと言われていますが、そこには、「ウシハクとシラス」の統治方法の違いがありました。



憲法十七条についてもお話しが出ましたが、これらについても大和言葉の読み解きが根幹にあることも分かりました。「憲法」は大和言葉では「いつくしきのり」と呼びます。この意味もなかなか深く考えさせられるものでした。
日本は大和言葉によってあり方を表現してきましたが、その言葉の意味に近い漢字を当てはめて現代に至っていることを知り、日本人の心の豊かさと智慧が表現されているのだと思いました。
漢字は中国から輸入されたものという認識を覆されます。


 

 たくさんの気づきをいただいた講義の最後のスライドはまたも「ワンピース」。このキーワードは仲間、コミュニティです。
こうしたアニメからも、「豈国」のために戦う主人公に大いに共感する私たちは、やはり日本人としての誇りが胸の中にあるのだと思いました。
 

事務局 村上

 

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これまでの活動

1.奪われた日本の歴史を取り戻すことの意義 神谷 宗幣
2.近世からの500年の歴史を振り返ると見えてくるもの  神谷 宗幣
3.日韓の歴史問題についてのワークショップ 神谷 宗幣
4.大東亜戦争は本当に終わったのか? 吉重 丈夫氏 
5.人種差別から読み解く大東亜戦争 岩田 温氏
6.日本国憲法の制定過程を学ぶ 岩田 温氏
7.日本人はどのように学んできたか~学問と国史~ 久野 潤氏
8.大東亜戦争とインドネシアの独立 長谷川司氏 
9.グローバル化の歴史と失われる日本の強み 施 光恒氏
10.歴史に学ぶ日本人の気概 久野 潤氏

11.情報戦の歴史  北野 尚人氏
12.日本の国体論と戦後教育 吉重 丈夫氏
13.阿波古事記と日本人の幸福感 、失われた倭国  三村 隆範氏
14.神話から学ぶ、日本の歴史 中東弘氏
15.GHQの検閲政策 岩田温氏
16.薩摩の原動力となった郷中教育と西郷隆盛 西郷隆夫氏
17.「歴史戦」はオンナの闘い 杉田 水脈氏
18.日本はなぜ大東亜戦争に敗れたのか〜経緯と原因〜 久野  潤氏
19.台湾と日本の交流の歴史と今後の展望 李久惟(ジョー・リー)氏 
20.「金融支配体制の歴史とマインドコントロール」 池田 整治氏
 

21.沖縄問題の起源:講和条約と沖縄の処理 ロバート・D・エルドリッヂ氏
22.沖縄返還と日米関係 ロバート・D・エルドリッヂ氏
23.尖閣問題と日米関係 ロバート・D・エルドリッヂ氏
24.日米同盟の形成と展開 ロバート・D・エルドリッヂ氏
25.日本人が知っておくべき「戦争」の話 京本 和也(KAZUYA)氏
26.自由民権運動の真実   黒田 裕樹氏
27.世界を動かす共産主義とグローバリズムの歴史 吉重 丈夫氏

28.近現代史を学べば日本人の意識は変わる 神谷 宗幣

29.「国難を救った明治の大政治家」小村寿太郎の情勢判断能力と

  胆力  林 英臣氏

30.大日本帝国憲法の真実 黒田 裕樹氏

 

31.「明治維新の世界的意義」~西郷兄弟物語~ 中島 剛氏

32.「大河ドラマを横目に改めて学ぶ西郷隆盛」  久野 潤氏

33.「日本の歴史のターニングポイントを確認する」 神谷 宗幣

34.「日本の歴史と日本の精神」   神谷 宗幣