オランダ視察 3日目。引き続きテーマは教育です。

この日は学校現場ではなく、まず学校の運営の組織について学びました。

日本では、国に文科省があり、都道府県と市町村に教育委員会があり、各学校に職員会議やPTAがありますが、

オランダでは、国の文科省の下にいきなり学校を経営する学校理事会があり、国が生徒1人に対して予算をつけて学校理事会が学校を経営します。

我々が話を聞いた理事会は7つの学校を運営する理事会でしたが、大きな理事会なら30以上の学校を運営するそうです。

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理事会の上には、監査委員会があり、ボランティアの識者がいて、勝手な経営はできないとのこと。

また全体の運営方針は、各学校から先生一名、保護者一名を選抜した経営参加評議会があり、ここの同意がないと舵がきれない制度になっています。

民間の経営の専門家を雇い、監査と先生と保護者がチェックする形ですね。

オランダの教育に多様性があり、自由にやれるのはこうした裁量が保護者や学校に近いところに降ろされているからなんですね。

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学校の運営費は生徒1人あたり国から年間65万円ほどが支給され、学校の取り組みに合わせて基礎自治体からも補助金がでる仕組みです。

オランダも教育費は無償ですから、運営側は公立も私立もこの予算内で、先生を雇い、学校を経営せねばなりません。

この制度だと、経営のミスで学校が潰れる緊張感はありますが、教育でお金儲けはできないです。

学校側のマネタイズはせいぜいPTA会費をあげるくらいしかないとのこと。

また、先生の採用は学校理事会が行いますから、学校の教育に合わせた先生が採用できます。


日本も教育の無償化を考えていますが、
文科省ー教育委員会ー学校のしくみを残したままでは、文科省の権限が強くなり過ぎる危険がありますし、

私学の学費は賄えず、いびつな制度になる気がして仕方がないです。

オランダのように、公立と私立の違いをなくすくらいの制度改革が先に必要ではないでしょうか。

そうなれば日本にももっと多様な学校が生まれ、とがった教育ができる気がしました。


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午後はオランダに7つあるという教員養成大学院を訪問し、オランダの教員養成についてお話をきいてきました。

オランダの教育については、学力が高く、教育格差が少ないことで評価が高いですが、現場ではやはりたくさん課題があるようです。

例えば1980〜2000年にかけては教員の主体性が失われてきたので、先生のレベルアップに予算をつけ、先生方がグループで能力を高め合う環境を作ってきたが、最近は先生方がカリキュラムや現場のシステムを作り出すためのリーダーシップが求められているそうです。

そうしたニーズで大学院に来ているのはほとんどが学校現場で先生をされている方でした。

学ばれている先生にインタビューすると、
学校を俯瞰できるようになった、
実践を理論で裏付ける力がついた、
ということでした。

オランダの子供たちにどんな力をつけさせたいかと質問すると、
自分が今なぜその行動をとっているかをわからせ、自分で計画し、自分で前に進む力をつけてほしいとのことでした。

なかでもオランダの先生が皆さん強調されるのは、現状や情報に疑問をもつ思考力をつけさせたいということです。
与えられたものを鵜呑みにしないという意味でもあります。

これはまさに日本の教育に欠けているところです。

また、オランダの教育のいいところは、
どんな人材を育てたいかは、各学校で決められるとのこと。

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授業風景を見学したのちに、
最後はオランダの教育の課題をきくと、

10年ほど前に教育をより自由した結果、教育レベル維持のため国主催の学力テストを始め、結果の公表を始めたら、保護者がその点数ありきで学校を選ぶようになり、各学校が生徒をあつめるために学力テストの点数を競うようになったことが問題だとおっしゃっていました。

この回答は非常に意味深いものです。

この状態が極まると、日本のような偏差値重視の教育になるのでしょう。
そしてオランダのように、教育の多様性や人間力を求める教育がよいとなるんです。

しかし、それも行き過ぎるとまたなんらかのものさしで教育の質をチェックしないといけなくなるということを感じました。

つまり、何事もバランスが大切で行き過ぎは反動を生むということを教えてもらった気がします。


オランダの教育システムについては、詳しい情報もレクチャーしてもらったので、また帰国してからシェアします。

今回はデンマークとも比較できて非常に深い学びになりました。

日本の素晴らしい点と海外から学ぶべき点を組み合わせて、時代に合わせてバランスのとれた教育を考えたいという思いを強くしました。

多くの政治家や学校の先生方にも、海外の教育をもっとみてもらいたいです!