オランダ視察2日目のテーマは教育。
今日からはオランダで6年間教師をされていた仲本かなさんにご案内をお願いしています。
今日最初にお邪魔したのは、オランダに15校あるシュタイナー学校の一つで、日本の中高学校にあたる学校です。
朝礼といっても先生方はシュタイナーの言葉を読まれただけでした。教育の目的を毎朝確認するということでした。
まず学校の教育の大目標は
「自分自身になる」ということ。
そのために、「人は誰でも使命を持って生まれてくる」というシュタイナーの人智学を基本にし、子供の発達段階に合わせた教育をしていくということでした。
学校には日本でいう中1から高3の生徒がいますが、学年ごとにテーマがあり、それに沿って教育内容が変わります。
例えば中1なら「冒険や発見」。
コロンブスの航海や天文学などを学ぶそうです。
高校に入ると、感情のコントロール、自分は何者か、理想と現実という感じでテーマが変わるといことでした。
ここで、具体的な教育についていくつか聞くと、オランダでは先に法則や公式は学ばず、まず体験や実験からそれを考えさせるやり方をとります。
歴史を学ぶ意義については、情報の分析力を身につけることと、先人の行動や思いを知り、自分に置き換えて考える力をつけること、とのこと。
さらに、シュタイナーの人智学からくる教育のあり方に話がうつり、「頭、心、手」を使って学んでいく方針だと聞きました。
頭とは、経験や体験から学ぶ知識と自己認識、批判的思考を身につけること。
心は、他人との良い関係を築ける力をつけること。
手とは、芸能、技術、美術、運動などから、自分のやりたいことを見つけ、困難を乗り越えてそれを形にする力を身につけることというお話でした。
最後の校長先生との意見交換で、オランダの教育の長短を聞くと、
長所はいろいろな教育があり、自由に選択できること。
短所は、国が実施する卒業認定試験の内容がどんどん知識偏重になってきていて、現場の生徒や先生のことを考えていないように感じられることと、他のヨーロッパの国に比べて教育予算が少なく現場にしわ寄せがきているということでした。
日本のセンター試験は知識のみですし、日本はオランダよりも教育予算が少ないんですが、、、
と思いながら学校をあとにしました。
そして午後は、8年前から多重知能理論を用いて教育をしている小学校を訪問させていただきました。
こちらの小学校は4〜12歳が通います。
多重知能理論とは、アメリカのハワード・ガードナーが提唱したもので人間には8つの知能が備わっていて、それぞれが作用し合い、個性を形成しているとの考えです。
知能には、言語、論理数学、空間、身体運動、音楽、対人、内省、博物といったものがあるのですが、この学校では課題学習に取り組むのに知能にあわせた8つのアプローチを用意し、子供たちが自分で選択し計画を立てて学べるようにしています。
課題学習には1テーマに5週間ほどかけて取り組み、年間で8つのテーマをやり、年度末には幼児から高学年までが一つの統一テーマで学ぶとのことでした。
課題学習は各自が8つある学びの中から好きなものを選び、ガードに書かれた指示に従い学習を進めます。
オランダの学校にはもはや黒板もホワイトボードもありません。
電子黒板をタッチして先生が授業をすすめます。
そもそも先生が授業中に話す時間がほとんどないというから衝撃でした。
学習も自己管理、自己責任でやりなさいということなんです。
各自の理解度に合わせて、どんどん勉強をすすめます。
ここまで見てこられて、この学習スタイルどこかで見たことありませんか?
私は江戸の寺子屋そのものじゃないかと思いました。一斉学習もやっていた寺子屋ですが、基本は自学自習。大人はそれをリードしてわからないところや質問に答える。そんなスタイルでした。
江戸モデルはゴッホだけではなかったのかも、と思いました。
校内視察後の意見交換で、多重知能教育を初めてからの子供たちの変化を聞くと、
・自立し自分の行動に責任をもつようになった
・計画を上手くたて、オーガナイズする力がついた
・自分がなぜその行動をとるのか理由を考えるようになった
・体験からの学びが増え、知識量も増えたとのこと
一方で先生方の負担は増えたといいます。
というのは、一見子供たちが自由に勉強しているように見えても、その環境を先生がつくるのにものすごく力量が必要になると。
多重知能教育においては、先生をトレーニングするカリキュラムやマニュアルは作っておらず、現場でやりながら学んでいくとのこと。
コーディネーターは年に1〜2回循環してくれるそうですが、人数は少なく、人気が出てオランダで250の学校が多重知能教育をする中、なかなか指導も受けれないとのこと。
この学校でも授業を回す体制づくりに2年かかったそうです。
自由に学習させるということは楽そうに見えて、実は非常に難しいんですね。
日本のきのくに子供の村学園を視察させてもらった時も同じことを感じました。
やはりいい教育をするには、いい先生と環境を作らねばならないんですね。