龍馬プロジェクト中国ブロック研修2日目は、隠岐の海士町を視察でした。
午前中は【隠岐島前教育魅力化プロジェクト】の取り組みをレクチャーいただきました。
海士町も他の地域と同じように戦後人口が3分の1ほどに減って、現在の人口は2400名程度に減っています。
その中で子供の数も減り、地元の高校は学力や魅力が低下、その結果地元の子供の4割ほどしか地元の高校に進学しなくなってしまいます。
平成20年ごろには年間の高校入学者が20名を切ってしまいそうな状態になり、高校の統廃合も考えられていたといいます。
子供を島外の高校に行かせないといけなくなると、保護者の負担は年間100万を超えます。
そんなことなら一緒のこと本土へ移住しようということになりますます島の過疎化が進むという悪循環がありました。
つまり地域の教育力の低下が、そのまま地域の衰退につながっていることを海士町の皆さんは気が付いたわけです。
そこで始まったのが【隠岐島前教育魅力化プロジェクト】。
岩本悠さんら外部人材の力を取り込んでの教育改革です。
従来の知識教育中心の教育を変えて、自身の目標探究や、地域に出て地域を学ぶという日本ではユニークな教育をスタートし、【島留学】制度で島外の学生を受け入れることで、地元の学生にも多くの刺激を与えられる学校づくりに変えていきました。
また、刺激は【島留学】だけでなく、ICTを活用した県外の学生とのWEB上の共同の学びや、海外の大学を訪問する修学旅行に海外各国との情報交換など様々な取り組みによりもたらされます。
こうした努力の結果、学生数は倍増。地域の子供の地元高校進学は7割に回復し、島外からの入学希望は2倍ほどになったといいます。
さらに地域課題などに向き合った学生たちは、大学進学で島外に出ても将来的には島に戻ってきたいというようになったといいます。
地域教育の魅力アップが、地域衰退に歯止めをかけることを証明しつつあるプロジェクト詳しい内容はこちらの本などをご覧ください。
私も教育の見直しを訴えて10年政治をやってきましたが、やはり教育からしか地域は変わらないと思います。
明治以降の均一化された、知識と技術を重視した教育はもう今の日本にはあってないのです。
偏差値教育をしても今の日本に必要な人材は育たない。
日本の歴史や先人の思い、我が国の強みを知った上で、世界の中で国と日本人がどんな役割を果たすかを分析し、ビジョンをもった人材をつくって、国や地域の課題を考えさせないと、東大に入れて大企業社員や官僚を増産してもダメなことをはやく認めて方向転換すべきです。
レクチャーを頂いた方も、
「グローバル化する世界の中では日本は遅れているといわれ、島根県は日本の中で遅れているといわれ、海士などの離島はその島根の中で遅れていると考えられているが、見方を変えれば新しい地域づくりのタグボート的な役割を果たせるかも」とおっしゃっていました。
私もまったく同感で、地方の小さなコミュニティーに大きな可能性があると考えて、全国の過疎地を回ったりしています。
2400人の町の教育改革に、今後も大いに期待します。
【参考】
危機感の共有が生んだ攻めの一手――海士町・島前高校魅力化プロジェクトが見据えるまちづくり(前編)
午後は、会場を移して、海士町が財政破綻寸前の状態から如何に持ちこたえてきたかというお話を聞かせていただきました。
戦後、海士町は、人口が2400人にへったということでしたが、当然財政もガタガタになり、
かつての海士町は「財政再建団体」一歩手前の状況まで来ていました。
そこで、近隣市との合併話が進んでいましたが、仮に隠岐諸島すべてで合併しても人口は2万人程度。一つの島が一つの自治体となっている状況を壊せば、地域の疲弊はさらに進むことも予測されたため、海士町の人々は合併を避け、なんとか自分たちで生きていく道を探すことにしたそうです。
自分たちの島は自ら守り、自民たちの島の未来は自ら築く!
を合言葉に、島の守りと攻めを考えてこられたそうです。
町長が変わり報酬カットしたことをきっかけに、役場の幹部が自分たちで自主的に給与カットをしたり、365日勤務体制をシフトで組んで、50名ほどの職員が民間の職員のように、利益を上げられる仕事をやり始めたとのこと。
給与カットにおいては、自治労の本部の方からとんでもないことをするなと、横槍を入れられたそうですが、それを乗り越えて実施。
さらにすごいのは、行政が主体となって、食品の商品開発やブランド牛の生産、販売を行ってきたという事実です。
島外からの人材を連れてきて、彼らがビジネスしやすいインフラに投資をして、起業させているというのですから、信じられないことです。
税金で特定の民間人を支援しているといわれたら、絶対にアウトになる事例ですが、そこまでしないと人口2400人の村に産業など生まれないという危機感でやったそうです。
こうした取り組みで、報酬カットでういた予算は子育て支援にまわすなどしたいった結果、都市部からの人口流入が増え、なんと人口の減少がストップしたのです。
税収も少しは上向きになり、町に活気が出てきたといいます。
今では地方再生のモデル事例のようになっていて、成功事例といわれることもあるそうですが、それでも実体はかつかつの状態。
気を抜けばすぐに逆戻りするとの事で、危機感を持ってやっておられました。
確かに、年間予算は50億円なのに、税収は2億円程度しかないとの事でしたから、3割自治どころか5%自治の状態です。
先日訪問した石川県の珠洲市よりも厳しい状態なんですね。
説明してくださる職員の方が、あまりにも熱を込めて訴えられるので、私も同行した仲間も少し泣きそうになったほどでした。
都会にいたら分からない地方の現実です。
私は6年ほど市議をやって、落選して4年間も活動をとめず、全国の自治体を回り200ほどの自治体の取り組みを視察してきましたが、現状は年々厳しくなっているように思います。この10年で高齢化も進みました。
百田尚樹さんがカエルの楽園という本で「国が緩やかに老いていっている」と書かれていたと記憶していますが、
日本の状況はまさにそれです。
先行きは分かっているのに、まだ皆さんがなんとかなるだろうと、他人事にしているように感じられてなりません。
私が海外に視察に行くのは、海外の日本と比べれば小さな国々の生き残りをかけた必死の努力に学びたい、その事実を日本人に伝えたいと思っていたからです。
しかし、日本でも今回の海士町のように、危機感をもって知恵を絞っているところがあると知って、多くの皆さんに知ってほしいと思いました。
私が住む吹田市は、その立地のよさからずっと不交付団体でしたし、人口も増えています。
ここなら誰が市長になってもそこそこはまわるんです。
突き抜けたリーダーが出てきたら、一気に日本の最先都市にもなれるでしょう。
しかし、危機感がないから誰もそこまでやろうとはしません。
今回視察した離島や過疎の地域には危機感はあるんです。けれどもお金や人材が足りなくて、緩やかに老いていってしまう。
国の【地方創生】の政策は、本当はそうした厳しい地域に、自分たちのことは自分で考えてやっていけという厳しい政策だったはずなんですが、、、
なんだかまた国からのばら撒きと勘違いしてやっている人が多いように感じます。
人口が減り、経済がダメになる、労働力が不足する、だから移民をいれよう!
なんて馬鹿げた発想になっている人もいますが、
そんなことをやる前に、今回の海士町のようにちゃんと若者の教育をして、
地域の課題に向き合わせて、このままじゃ自分たちの故郷や文化が失われるんだという危機感をもってやらせることをしないとダメです。
最近、政府は国民を馬鹿にして、ただの消費者に落とし込み、自分たちで生きていく力も思考も奪おうとしているのかと思う事もあります。
10月に訪問したデンマーク、先日訪問した能登半島の珠洲市、そして今回の海士町での学びは是非多くの方々と共有したいです。
本当にもっと真剣に、国の将来や自分たちの子供の世代の生活を考えて、アクションをおこしていきましょう!!
来年は、奄美大島や佐渡島にも行く計画ですので、ご一緒いただける方は是非一緒にいきましょう。