また、4月下旬に警察と検察から連日取り調べを受けていた中林社長が「人数が合わないと言われて、刑事に怒られた」「最初は2人で会ったと言ったが、新しい証拠が出てきて3人になった。もう1回調書の取り直しだ。疲れる」などと留置場で漏らしていたと、O氏は語った。これは10万円の現金授受があったとされる美濃加茂市内のファミリーレストランでの会食について、当初は「藤井市長と2人きりで会った」としていた中林社長が、後になって「同席者がいた」と供述を変えたことと符合する。
その後、O氏は名古屋拘置所に身柄を移されたが、中林社長とは手紙のやり取りを続けた。藤井市長の逮捕や保釈をめぐる報道について、情報を制限されている中林社長が知りたがっていたからだという。しかし、事件の内容や人材派遣の話などをめぐって、中林社長への不信感が極まり、O氏は、保釈後の藤井市長や郷原信郎弁護士に手紙の内容などを伝えることとなった。
「刑事も検事もだまして、今こういう状態になっているのではないか」
O氏はこう主張した。しかし、中林社長はあっさりと否定した。「市長の名前」や「人数が合わない」などといった点について、「私は言ったことがない」と法廷で断言した。
O氏との関係については「波風を立てないような付き合いを維持するだけで、話を合わせることもあった」と述べ、人材派遣業の件についても「誤解されている」などと、自らの主張を滔々と語った。
●裁判長は前回尋問との「矛盾」を追及さらに、中林社長は、ファミリーレストランでの人数を含めた事件の実情について、メールや伝票などを見せられたことで、4月中旬には記憶が喚起できていたと説明。4月下旬まで「つじつま合わせ」をしていたとする見方を否定した。検察側も、それを確認させるような尋問に終始した。
一方で、鵜飼祐充裁判長は「前回の証人尋問で、昨年4月以降は藤井市長と会っていないと言っていたが、実際は11月にも会っていた」と公判での矛盾点を追及した。
それに対して、中林社長は「(6月の)市長選までの話として言った」などと弁解したが、鵜飼裁判長は「市長選後もお金を渡そうとしたと言っていなかったか」などと突っ込み、納得していない様子だった。
最後に郷原弁護士が「今回の尋問のために何度も検事と打ち合わせしたのではないか」と問うと、2人の検事が「異議あり」と声をそろえ、「何度も、ではない」と主張。「では何回か」とあらためて聞かれた中林社長が「6、7回」と答えると、傍聴席から思わず笑いが漏れた。
次回は12月19日、検察側の論告公判となる。
(弁護士ドットコムニュース)