先週夕刊フジに掲載された記事をまとめました。

これらのテーマについてはそれぞれCGSの『変容する中国のシナリオ』で突っ込んで聞いています。

随時配信していきますので、
お楽しみに!


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【妄想暴走中国】
闇に葬られる天安門事件 ネット規制強化で関連記事検索できず
2014.06.10

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6月4日は天安門事件から25周年にあたり、日本を含む世界各国で大規模な追悼式典や集会、デモが行われた。世界の億単位の“良識ある目”がリアルなドキュメントとして見届け、今も生々しい記憶として残るが、中国政府は「一部の学生による暴動」と片付け、人民解放軍による武力制圧で多数の死傷者が出た事実を、総括も謝罪もしていない。

それどころか、遺族からの賠償請求には無視を決め込み、民主活動家や人権活動家、学者、弁護士らを逮捕したり自宅軟禁にするなど容赦ない。さらに天安門事件に関する取材を北京で進めていた海外メディア、果ては天安門広場でVサインをして写真撮影をしただけの人民までが“見せしめ逮捕”されたとか。

過去10年で最も強い治安維持体制が取られているとの声や、ネット規制をさらに強化しているとの声もある。中国版ツイッター「微博」(ウェイボー)の検索欄にまず、「天安門事件」や「六四」と打ってみたところ、出てきたのは「関連する法律法規と政策により、検索結果の表示はしない」との文面だった。

しかも中国政府は1976年4月5日に起きた民主化の原点とされる運動「四五運動」を、いつしか「天安門事件」(=日本では第1次天安門事件)と記すようになった。記事検索などで、こちらの情報なら出てくるが、6月4日の天安門事件は「六四政治風波」「六四動乱」などにすり替えている。この言葉で検索しても、やはり内容は表示されない。

何より「自由」「人権」「民主」を求めて平和的に抗議をした若き人民が、どれほど命を落としたのか、死者数については数百人から数千人と多様な説があるが、いまだに公式な発表はない。人民の管理・監視には非常にたけているはずの中国が、である。

このように中国政府はわずか4半世紀前の“真実の武力制圧”については知らぬ顔で、半世紀以上前、つまり中華人民共和国の建国前の“日中関係史”だけは専門家気取りでいる。

習近平国家主席は3月下旬からの欧州歴訪中、ドイツの首都ベルリンで講演を行った際、「旧日本軍は南京占領時に30万人以上を虐殺した」「日本軍国主義が発動した侵略戦争で、3500万人以上の死傷者が出た。残虐行為は今もわれわれの記憶に残る」などとホザいてくれた。

25年前の真実の歴史-無残な殺戮(さつりく)行為を闇に葬ろうと、姑息な手段で悪あがきを続ける中国政府に、歴史を語る資格などない。

■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。主な著書は「中国崩壊カウントダウン」(明成社)、「豹変した中国人がアメリカをボロボロにした」「だから中国は日本の農地を買いにやって来る」(産経新聞出版)など。


【妄想暴走中国】
日本企業への理不尽なカツアゲ戦略 各地で賠償企む“反日訴訟活動家”
2014.06.11

習近平政権になって、中国では政治犯・思想犯による投獄者が激増している。一方、1990年代には中国政府の監視対象だったのに、ゾンビのごとく蘇った政治的人物もいる。その1人は“反日訴訟活動家”で「中国民間対日賠償請求連合会」の童増会長である。

中国サイトによると、童氏は「中国民間保釣聯合会(=尖閣諸島を守る中国民間の連合会)」会長や、学者、投資会社の董事長(会長)、中国宋慶齢基金会理事など、複数の肩書を持つ。強烈な民族主義者で「2005年の反日デモの仕掛け人」との記述もある。

童氏が対日訴訟に目覚めたのは「西ドイツがユダヤ人に損害賠償を求める道義的権利があることを認め、生存者への支払いに同意した」という、1988年の報道がきっかけとされる。

「同様の訴訟ができるはずだ」と動き出したが、中国には89年の天安門事件で西欧社会から強い制裁が加わった。ベルリンの壁崩壊や、共産主義国家の瓦解もあり、中国共産党はまさに崖っぷち。頼みの綱、つまり金づるは「平和ボケ」した日本だけだった。そのため、童氏の動きは封じ込まれた。

その後、国家賠償を民間の個人賠償に切り替え、日本でも訴訟を何回か起こしたが、「日中間の請求権の問題は、72年の日中共同声明後は存在しない」「国家賠償責任には民間の賠償責任も含まれる」を理由にすべて敗訴した。中国各地の人民法院(地裁)でも提訴したが、いずれも同じ理由で却下され続けてきた。

ところが今年3月、三菱マテリアル(旧三菱鉱業)と日本コークス工業(旧三井鉱山)の2社を相手に、第2次世界大戦中の「強制連行」をめぐって、元労働者や遺族へ損害賠償や謝罪を求める訴状が北京市第一中級人民法院で受理された。

4月には、日中戦争勃発前の船舶賃貸契約をめぐる訴訟で、上海海事法院(裁判所)によって、商船三井の大型船が浙江省の港で差し押さえられた。その後、商船三井が賠償金に金利などを加えた約40億円を、供託金として中国当局に支払った事実も報じられた。

中国の司法界は、共産党の指導下にある。国交樹立以来、約40年続いた日中両国政府の見解を反故にして、習政権はそれ以前に時計の針を戻して“カツアゲ戦略”へと舵を切った。「日本の帝国主義戦争を支えた極悪非道な企業」への報復は当然であり、日本の弱体化、属国化への早道と考えているのだろう。

「今後も似た裁判を、各地で起こす準備を進めている」と、活躍の時を迎えた童氏の鼻息は荒い。「強制連行」「過労死」などの対日訴状が、各地で受理されて裁判になれば、日本企業への厳しい判決は免れない。日本は、理不尽な“カツアゲ”に断固として対抗すべきだ。

■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。主な著書は「中国崩壊カウントダウン」(明成社)、「豹変した中国人がアメリカをボロボロにした」「だから中国は日本の農地を買いにやって来る」(産経新聞出版)など。


【妄想暴走中国】

ベトナムの反中デモに便乗? 中国側が暴動を自作自演か
2014.06.12


南シナ海での中国による石油掘削作業に端を発し、首都ハノイはじめベトナム各地で沸き起こった「反中デモ」だが、何やら複雑な力学が絡み合っていたようだ。

“暴走族化”したグループが、ベトナム最大の都市、ホーチミン市郊外のドンナイ省の工業団地にバイクで突撃し、ガラスを割って略奪したり、建物を放火するなどした。日本の一部メディアは「デモ隊は中国系と台湾系、日系などの区別がつかず、漢字の看板をターゲットとしたようで、日系企業も複数被害にあった」などと報じた。

ところが、あるホーチミン在住者は「逮捕された人物が『間違って日系企業を襲撃した』と発言したなど、知る限り国内の新聞報道にはなかった」と語る。別の在住者も「中国系企業より、台湾、韓国、日系企業がむしろターゲットになったように感じる」と述べている。

外資系企業に対し、中国人労働者の雇用を認めているドンナイ省に拠点を構える台湾や韓国の企業は、中国人労働者を積極的に雇用している。このため、「中国人が激増したことによるトラブルも多く、ベトナム人労働者は、行政と外資系企業への不満を募らせていたはず」と、ベトナム在住の日本人は語る。

さらに、「デモ参加者の多くは、中国側に買収されたベトナム人労働者で、5万ドン(約250円)が支給された。国旗や狙い撃ちする企業の位置を記した地図まで準備されていたらしい」との話も聞いた。中国側が一部であれ暴動を自作自演したとすれば、その目的は何なのか?

日本貿易振興機構(JETRO)によると、2013年の世界からベトナムへの直接投資額(認可額)は前年比36・5%増だ。「チャイナプラスワン」を求める企業が、賃金水準の低さと勤勉さ、人口約9000万人の市場規模、タイ王国と異なり政情が安定していることなどから、ベトナムに注目している。

その“有望株”を、中国側が「投資に値しない野蛮な国」に仕立てるべく、反中デモに便乗し、火に油を注いだ可能性があるのだ。事実、中国の共産党系メディアは、中国企業や中国人に対するベトナム人による殴打、破壊、略奪、焼き打ちなどの行為を喧伝し、「ベトナムは、東アジアの投資者の公敵になった」「外資の信用を打ち砕くことになる」「結果はすべて、ベトナム自身の頭上に落ちてくる」などと挑発的に報じている。

ベトナム漁船に体当たりし、沈没させたことは当然の報復ってことなのか?

ちなみに、ベトナムのグエン・タン・ズン首相は中国留学組だ。そのため、「親中派で弱腰」な現政権への不満が爆発したことによるデモとの指摘もある。いずれにせよ、アジア諸国と周辺海域は“モンスター中国”をめぐり、大荒れ模様が続きそうだ。

■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。主な著書は「中国崩壊カウントダウン」(明成社)、「豹変した中国人がアメリカをボロボロにした」「だから中国は日本の農地を買いにやって来る」(産経新聞出版)など。


【妄想暴走中国】
中国にすり寄る馬政権に学生が猛反発 「自由」「民主」守る台湾の戦い


「あの日から、台湾は息を吹き返した。雰囲気がガラリと変わった」

5月下旬、私が滞在していた台北では、こういった期待の声や安堵(あんど)の表情に幾つも出会った。

「あの日」とは、後に「ひまわり学生運動」(太陽花学運)と呼ばれる台湾の大学生たちが、立法院(国会)の議場を占拠した3月18日のことだ。

台湾政府と中国政府が秘密裏に交渉を進めてきた「サービス貿易協定」の批准に向けた3月17日の審議で、与党・国民党の立法委員(議員)が「時間切れ」を理由に審議を打ち切り、強行採決に移ることを宣言した。これに反発した学生らが、毅然と立ち上がった。そして、3月30日、主催者発表約50万人(警察発表は11万人超)が総統府前での抗議デモに参加し、クライマックスを迎えた。

学生運動のリーダーは「自由と民主主義を守る戦いでもある」と国内外のメディアに訴えていたが、身近に反面教師が存在する。お隣の香港だ。中国返還後の表看板は「一国二制度」だが、自由も民主も人権も大きく後退した。本土の人民がなだれ込み、中国マネーによる不動産バブルが起き、香港庶民が生活苦に陥っている惨状を、台湾住民は熟知している。

「ひまわり学生運動のデモに参加した香港人は、ぼくを含めて大勢いたはず」

台湾の芸術系大学で学ぶ香港人の男子学生はこう語り、「卒業後に香港へ帰るつもりはない。両親も帰省を望んでいない」と続けた。近年、台湾へ移住する香港人は少なくないらしい。

馬英九政権は若年層の支持率が極端に低い。不支持の理由について、台湾大学の女子学生は「政治家は国民を大切にし、特に弱者を救済することに力を注ぐべきなのに、馬政権は大企業にだけ目を向けている」と述べ、輔仁大学の男子学生は「偽りの社会主義国、超格差社会をつくった中国にすり寄っている」と顔をしかめる。

中国は●(=登におおざと)小平の遺訓、「以経促統」(経済で統一を促す)策を台湾において進めてきた。習近平体制となり、統一工作を次ステージの「政治的対話」へ昇格させようと必死だ。和平協定の締結、その先に中台統一を目指すシナリオだ。

これに対し、台湾の学生たちは「われわれは台湾人であり、独裁政権の中国とは絶対に一緒になどならない」と強気だ。

一方、中高年の現役世代は「中国への依存度が高まれば、台湾は最終的に中国に編入される」との危機感を抱きつつも、「統一の流れを、いずれは回避できないのでは…」と、どこか弱腰でいる。

「すんでの所で、学生たちが果敢に立ち上がってくれた」と顔をほころばす熟年世代。中国共産党にとっての天敵、「自由」「民主」を死守するための台湾の戦いは、火ぶたを切ったばかりだ。

■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。主な著書は「中国崩壊カウントダウン」(明成社)、「豹変した中国人がアメリカをボロボロにした」「だから中国は日本の農地を買いにやって来る」(産経新聞出版)など。


【妄想暴走中国】
“言うだけ”オバマ大統領に乗じ沖縄本土強奪を画策する中国
2014.06.14


「米国による日本への琉球返還(沖縄返還、1972年5月)は国際法的には根拠はない。日米2カ国間の授受であり、中国は承認しない」「明治政府が中国から琉球を強奪した」

中国共産党系メディアで最近、沖縄の領有に関する挑発的な論文が散見される。

李克強首相が昨年5月に訪独した際は、ブランデンブルク州にあるポツダム会談の会場跡地を見学し、「日本がポツダム宣言を受け入れ、無条件降伏したことを人々は忘れない」「ポツダム宣言第8条は、カイロ宣言の条項を履行すべきことを明確に指摘している。カイロ宣言は、日本が中国から盗み取った領土を中国に返還するよう規定している」などと発言している。

いつもの情報戦のほか、習近平政権はさまざまな手段を駆使しつつ、欧米戦勝国が第2次世界大戦後に決めた世界地図やルールをリセットさせ、自国に都合のいい“オレ様流”に塗り替えていこうと必死だ。

そのため、中国政府が近年、とりわけ関係強化に腐心してきた国がロシア、そして、ドイツである。中国はEU(欧州連合)の原動力であるドイツ経済との緊密化、ロシアとの同盟関係の強化が、米国と日米同盟の牽制につながり、欧州を黙らせ、中国の立場を有利にすると考えている。

習国家主席が今年3月に訪独した際には、自動車やエアバス、原子力開発など10項目、総額100億ユーロ(約1兆3830億円)の契約を結び、独メディアは「中国は欧州の救世主」とすら報じている。

メルケル独首相も「ドイツにとって、中国はアジアで最重要パートナー」と明言しており、やはり中国の人権問題や知的財産権の侵害については口が重くなっている。

ウクライナ騒乱後、ロシアはウクライナ南部にあるクリミア半島を軍事的に制圧し、ロシア連邦に編入した…。冷戦終結後の秩序破壊が進むなか、習国家主席率いる中国は、欧州パワーの低下を見極め、オバマ大統領を“言うだけ番長”とせせら笑い、「地図や歴史の塗り替えには千載一遇のチャンス」と捉えているはずだ。

南シナ海や東シナ海で暴れてみせる中国は、台湾併合だけでなく、沖縄県・尖閣諸島を実効支配する機会をうかがい、沖縄本土の強奪まで視野に入れ始めている。しかし、「反米」「反基地」が売りの地元紙『沖縄タイムス』『琉球新報』は、中国の脅威をまともに報じようとしない。沖縄本土や尖閣諸島の歴史や領有権についても、政府見解と異なる、読者の混乱を招く内容ばかりを掲載している。

ただ、沖縄県が昨年末に行った「中国に対する意識調査」によると、県民の89・4%が「良くない印象」「どちらかといえば良くない印象」を持っていると答えている。好き嫌いの感情だけでは、平和な沖縄を死守できないが、県民は徐々に「国防」を意識し始めている。 =おわり

■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。主な著書は「中国崩壊カウントダウン」(明成社)、「豹変した中国人がアメリカをボロボロにした」「だから中国は日本の農地を買いにやって来る」(産経新聞出版)など。




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