私は残念ながら出会っていません。

出会った方いますか?(笑)

吹田の宣伝をありがとうございます。いい町です。




もしかしたらあなたも出会っていたかも… 妻夫木聡さんが大阪・吹田に“出没”

2012.11.23 17:00  産経ニュース

 俳優、妻夫木聡(つまぶき・さとし)さんの主演映画「黄金を抱いて翔べ」(井筒和幸監督)が現在、公開されている。「マークスの山」「レディ・ジョーカー」などで知られる作家、高村薫さんのデビュー作を映画化。大阪を舞台に、銀行の地下金庫から金塊の強奪を企てる男たちを描くクライム・ムービーだ。主演の妻夫木さんが大阪市内でインタビューに応じ、ロケ地の大阪や作品を語った。
(橋本奈実)
ファンに気づかれなかった2日間
 妻夫木さんが演じたのは、幼い頃、大阪府吹田市で育った設定の主人公、幸田。そこで役作りのため、撮影前に一人で吹田へ行き、2日間過ごした。現地の風を感じながら役作りをするのは、平成22年公開の映画「悪人」以降、彼がとっている方法だ。
 「吹田の街を歩きましたし、作品の鍵となる吹田の教会にも、ずっといました」。なんと吹田の街に、妻夫木さんが出没していた…。しかし帽子を目深にかぶっていたこともあり、ファンに見つかることはほとんどなかったという。
 その間、宿泊していたのは、吹田市の中心部からは少し離れた大阪市営地下鉄御堂筋線江坂駅近くのホテル。本当は吹田に泊まりたかったため、ウイークリーマンションを借りようとしたが…。
 「『当日は無理です』と言われて。ラブホテルみたいなところはありましたが、一人じゃダメだろうなと思って断念。極力、近いところを、と江坂に泊まりました」
 仕事で大阪市内にはよく行くものの、吹田は初めてだった。「大阪の都心から数駅離れただけで、印象ががらりと変わりました」。大阪には熱い街というイメージがあった妻夫木さんだが、吹田には“乾いた空気”を感じたという。
 水都と呼ばれるだけに、大阪には川が多いと思った。「でも、なぜか僕は乾いた感じがして。そこが居心地良かったんですよね。川向こうの都心を眺めていると、作品の登場人物のような思いになるのかな、と思いました」
 幸田の役柄の鍵となる場所と考えた吹田の教会で、最初は聖書を読み、趣味のカメラで写真を撮るなどして過ごしたが、しっくりこなかった。そんなとき、キリストの姿を正面から見て、ふと絵を描いてみようと思いついた。
 「持っていた手帳にペンで。そうしたら、すごく温かい気持ちになった。ここが自分の居場所だと幸田が思ったことが、腑に落ちました」。吹田滞在中の大半をこの教会で過ごし、暗くなるまでずっと絵を描き続けた。孤独を抱える悲観主義者と分析した幸田の心情を考えていたという。
初対面なのに「おう」の大阪人気質
 今作は井筒監督たっての希望で、小説の舞台である大阪ですべて撮影を行った。完成作を見た妻夫木さんは、その理由を改めて感じたという。「大阪の街で撮るから、この作品は成り立つ。街の持つ“匂い”や空気、一人ずつの温度が伝わってくるのだと思いましたね」
 大阪で撮影する必然性を、「極端な例ですよ」と前置きした上で、笑いを交えながら、こう例えた。
 「東京で撮ると、東京の人が大阪をまねた感じになると思うんですよね。日本をよく知らない外国人の方が『これがサムラーイ』っていうのと似た感じで(笑)。大阪で撮れたことは良かったと思います」
 大阪の印象は、凝縮された街。東京は渋谷、原宿、新宿と役割の違う街が点在していると感じている。「でも大阪はぎゅっとごちゃまぜ。僕の故郷、福岡も似たところがありますが、その入り交じった空気から、人の熱気を感じるのがすごく新鮮でした」
 撮影中も、ナニワの人々の熱気を感じていた。「最初はまったく人がいなくても、すぐにグワッと集まる(笑)。熱狂的な感じが今作と合っていました」
 大阪人気質も心地よかったという。一般の人々は気さくで、妻夫木さんを見ると、すぐに声をかけてきた。「『おう』と知り合いのような感じで肩を叩いてくる。僕は、いや初対面だし、と心の中でツッコミつつ、楽しく感じていました」と笑う。
 ロケ先で控え場所として部屋を貸してくれた人たちも、「協力」ではなく、「作り手の一員」という意識を持っていると感じた。「だから、僕も気を使わず一緒にいられた。そんな大阪の密な感じがすごく良かったですね」
髪はぼさぼさ、ひげを伸ばして…
 作品の設定は夏。うだるような暑さが画面に映し出されているが、実際には真冬に撮影していた。「本当に死ぬほど寒かったですよ。僕の役柄は吹田の川沿いに住む設定だったので、川から寒い空気が流れてきて。薄着にして、カイロをいっぱい貼っていました」
 最も寒かったのは、金塊強盗の舞台ともなる大阪・中之島だったという。「あそこはきつかったですね。びっくりした。でもね、不思議なもので、撮影が始まると、寒さを全く感じないんですよ」と役者魂を見せつけた。
 井筒監督との初タッグは念願だった。妻夫木さんは自分なりに幸田の役柄をイメージした姿を、撮影前に監督に見せた。髪をセットせず、ひげを伸ばした姿で会い、そのアイデアが採用された。衣装合わせには、役柄に合わせた服装で出掛けた。
 「新人時代によくやっていたこと。気に入ってもらい、今日の格好も写真に撮らせて、と。本編でも使用してくれました。今回、私服も結構あるんですよ」
 監督の演出は豪快な印象の人柄とは異なり、細かかった。「共演者はもちろん、米粒くらいにしか映らないようなエキストラさんにも、丁寧に演出をする。繊細でしっかり人を見ている方だと思いました」
 もっとも妻夫木さんは、監督からほとんど何も言われなかった。不安になって尋ねると、「幸田さん(妻夫木の役)は心配ない。好きなようにやってください」と言われた。「信頼されていると感じ、うれしかったですね。ジャパン・ノワールができたと思うので。洋画に負けない日本映画の底力、男臭さを見てほしい」
「大人な大人はつまらない」
 高い評価を得た映画「悪人」から、役への取り組み方が変わった。自分を完全に捨てて、役に近づくように。役になりきるゆえの悩みもある。「こういう役柄は体に悪い。いつも体調崩しますもん。友達減るし、私生活を犠牲にする。完成作を見たら、人相が違いますから(笑)」
 撮影中に描いた絵もそうだ。「悪人」のときに描いたものは、後日見たときに「気持ち悪くて捨てた」という。今作でも「後から気付きましたが、首つりの絵や目だけたくさんある絵を描いていて。母ちゃんが見て引いていました」と苦笑いする。
 待機作である山田洋次監督の「東京家族」の撮影中は、瀬戸内海の優しくて美しい海を描いた。「何度も同じ絵が描けたくらい好きな風景で、カラフルでした。これなら、親に見せても大丈夫」と笑った。
 今作を機に、カメラや料理に続き、絵を描くことが趣味に加わった。CM撮影で会った北野武さんに絵を描き始めた話をしたところ、「小さな絵を描いているだろう。最初から大きな絵を描いた方が楽しいよ」とアドバイスを受けた。
 手帳に描くことから始まった絵は、スケッチブックになり、いまではキャンバスにも描く。展覧会にも足を運ぶ。「軽井沢の美術館まで行くこともありますよ。北野武展も行きました」と話す。
 絵画にどっぷりとはまる日々だが、これまで「絵を習ったこともないし、絵心はなかった」と自己分析。子供の頃、漫画を描いて遊んだこともなかったとか。
 「でもね、子供の頃できなかったことも、意外とできちゃうものなんですよ」
 それは年を重ね、培った知識や創造力のたまものだと考えている。「描いているうちに、あれ、俺、遠近法を使っている、とかね。みんなできないと決めつけているだけ。大人って伊達(だて)に生きていないから」
 節目の30歳を過ぎ、いまは自分自身に夢中。「自分の新しい部分を発見するから。多分、いま僕は、自分自身がかわいくてしようがないんですよ。だから婚期が遅れてしまう」と笑わせる。「いい意味で、子供になっている気がします。時に、男って“子供”になれないと面白くないですよね」
 そう感じる出会いが数多くある。出演するビールのCM「大人エレベーター」シリーズで、各年代を代表する著名人と会う。彼らから学ぶことは多い。共通しているのは「自由なこと」。大人として童心を大切にする姿が、魅力的に映った。
 「大人な大人って一番つまらない。ちゃんとした大人の皆さんが『大人って、なんだろうね』と言うから格好良い。僕もそうありたいと思っています」
 いま挑戦したいのは、一人旅。「実は僕、一人でいることが苦手で、役作り以外で一人旅をしたことがないんですよ。思い切って、どこかに旅に出るのもいいかな」。常に殻を破り、新しい自分を探していく。