私たちが考えている「地方議員の手で日本を変える8つの方策」を述べてみたい。それはさながら、坂本龍馬の「船中八策」である。ただし、これはあくまで現時点でのものであって、今後、いまの龍馬プロジェクトのメンバーはもちろん、新たに加わってくれる同志も含め、より充実させ、実現可能性の高いものにしていきたい。

また、もしかしたら「そんなことは誰でも知っている」と思われるかもしれない。だが、私たちは誰もができることを、誰も真似できないくらいの圧倒的な行動力で取り組んでいく決意である。



1、「日本を何とかするぞ!」 という地方議員を100人集める



「日本を何とかするぞ」という確固たる決意をもつ地方議員(志望者も含む、以下同じ)、どんなことがあってもやり遂げようとする地方議員を、日本全国を駆け巡り100人集める。日本を変えるためには、これに尽きるといってもよいかもしれない。

「日本のここが悪い」「この問題を何とかして」という評論家的な人はたくさんいる。だが、「私が日本を変えなければ誰が変えるのか」という気概がある人物はほとんどいないという。本当にそうであろうか。私たちと同じ気持ちはあるが孤立している人、発揮する場面に恵まれていない人が、全国にいるのではないか。埋もれているのではないか。

私たちは「全国キャラバン」と称して日本全国を駆け巡り、同じ思いを共有してくれる同志を探してきた。最初は「いるかもしれない」という仮説だったが、途中から「他にもいるにちがいない」という確信に変わり、現在、この「日本を何とかするぞ!」という地方議員は、今後多少の入れ替わりはあるかもしれないが、100人集まったと見ている。

ところで、「日本を何とかしたい」という強い思いをもっている人は政治家以外にも少なくない。そこで、私たちは「これは」と思う人物には直接会い、プロジェクトへの参加を呼び掛けてきた。つまり、集結した100人の地方議員が、政治家以外の人、官僚、研究者、作家、コンサルタント、コミュニティのオーナー、スポーツ選手、芸能人等、社会的に影響力のある方々を大規模に巻き込んで、真の「オールジャパン」をつくり上げ、国家ビジョンやそれを実現するシステムを明確化するのである。



2、集結した100人が地域でブレーンを集めると同時に、 政策に精通して人間性を高める



次に、集結した100人の地方議員が自分の住む地域をくまなく回り、国家ビジョンやそれを実現するシステムに賛同する政治家や学生、主婦、専門分野を有するブレーンなど、共に運動を展開してくれる同志を集める。つまり「全国キャラバン」と同じことを、自分の住む地域でも行なうというものである。いうまでもなく、「地域キャラバン」は地方議員の得意とするところ。自分自身の駅頭や街頭での演説、チラシ配り、講演会などを通じて「龍馬プロジェクト」の案内を繰り返すことで、いままで応援していただけなかった方々も多数、仲間に加わってくださるようになった。

またその過程で、地方議員自身が国および地方の政策に精通すると同時に、自分たちの徳(人格・精神性)を高め、「彼らにやらせてみたら日本が変わるのではないか」と国民に大いなる期待と信頼を抱いてもらえるような集団になることが、きわめて重要だと思う。現代は、政治家や官僚、検察等に対する信頼感が大きく揺らいでいるといっても過言ではないからである。

中国古典の『書経』では、あるべきリーダー像を「放勲欽明文思安安」と表現している。直訳すれば、文武に秀でていることが誰の目にも明らかであり、またどんなときでも心が安定していること。私たちはこのような境地になっているなどというつもりはまったくないが、日々この境地をめざして登りつづけていたいと思う。人は、成長過程にない人には魅力を感じないそうなので、あるべきリーダー像をめざして登りつづけていることが重要であろう。幸いにも縁あって、岬龍一郎先生や林英臣先生、田口佳史先生など日本を代表する思想哲学の先生方から、まるで幕末の志士たちが私塾で学んだように、地域ごとに開催する「龍馬塾」で、ご指導いただいている。



3、集結した100人が同世代の若者によい影響を与え、 投票行動につなげる



100人の地方議員には、とくに投票率が低い20~30代の若者を積極的に取り込み、それらの世代の地方議員が集団で活動をしていくことで、同世代の日本人の政治に対する参加意識を高め、投票行動につなげていきたい。

現代の若者は冷さめている、社会や政治に無関心であるという。その一方で、自分の時間を割いて、ボランティアに積極的に参加する学生や各種勉強会に参加する若者が少なくない。私たちには、彼らが時間とエネルギーを何にかけてよいのか分からないという気がしてならない。であるならば、彼らの熱き気持ちの受け皿を提供し、一緒に日本や地域の将来を考えていきたい。意識の高い大学生と私たち地方議員の真面目なディスカッション。若き経営者と龍馬プロジェクトメンバーのトークバトル。若者に人気がある歌手のライブと政治家の熱いプレゼンテーション対決等々。いままでやってきたこと、これからやろうとしていることを挙げればきりがない。

これらの活動を通じて、既存の政治勢力の外に存在する、純粋に国民のために、国民とともに住民自治の視点で行動する地方議員を育成していきたい。中央集権のアンチテーゼとしての地域主権、すなわち住民自治の視点からの改革が必要なのは、いうまでもないことであろう。



4、 集結した100人が自らの地域を超えて国全体に日本再興のうねりを起こす



100人の地方議員が団結し行動を起こし、さらに国家ビジョンやそれを実現するシステムに賛同する地方議員の同志を大規模に増やしていく。その際、これまで地方議員があまり取り組んでこなかった「メディア活用」なども積極的に行ない、国全体に届くようなうねりを起こしていきたい。

幸いにもITの専門家や大手広告会社のビジネスパースンにも多数ブレーンとして参加いただいているので、たとえばホームページやブログ、メルマガ、ツイッターはもちろん、書籍や新聞、雑誌、テレビ番組等にも龍馬プロジェクトの意図が十分伝わるものには積極的に協力していきたい。現在でも「新聞や番組で取り上げたい」との話は多数いただいているが、こちらの対応が追い付かずに待っていただいている状況である。

このような取り組みを通じて、日本の政治は国政からトップダウンで変えるだけではなく、地方から草の根で変えていくことができるということを国民に認識してもらう。同時に地道な活動も継続し、地方政治が今後どれだけ個々の生活に影響を与えているのかを知ってもらいたい。つまり、一人ひとりにとってどうでもいいことではなく、生きていくために重要なものであることを国民に実感してもらおうと考えている。



5、地方議員のなかから首長を輩出させ、「成功モデル」 を積み重ねる



同志となった地方議員のなかから、全国規模で地方自治体の首長を複数輩出させ、また、すでに龍馬プロジェクトに賛同いただいている首長とも連携し、国家ビジョンやそれを実現するシステムを落とし込んだ具体的な政策を同時多発的に全国各地で実施に移し、新しい地方政治の「成功モデル」をつくり出していく。

ここでいちばんいっておきたいことは、「あれもやります」「これもやります」といった耳当たりのよ

い政策は唱えず、「あれもこれもできませんが、われわれは我慢して未来のため、 子孫のためにこれだけはやります。国民の皆さんも『国民主権』なのですから、自分に何がしてもらえるかではなく、 私は何ができるかを徹底的に考えてください」と言い続けることである。「民度を上げる」といってもよいかもしれない。

その結果、行政改革や財政改革などの成功モデルが次々に蓄積され、国家レベルでも「できない理由」を見つけることが難しくなり、地方から日本を変える実例が積み上げられていくことになる。



6、国会議員を輩出させ、志を同じくする国会議員と超党派で連携し「救国内閣」 をつくる



国家ビジョンを共有した同志のなかから国会議員を複数輩出させ、賛同する国会議員や政党とも超党派で連携、どうしても国でなければ対応できない日本の課題だけを解決させる「救国内閣」の実現を目指す。坂本龍馬が「薩長同盟」において実現したように、与党の志を同じくする国会議員と、野党の志を同じくする議員を結び付ける。

社会保障費の増大に伴う財政破綻の問題、当事者意識や大局観の欠如による道徳的退廃の問題、腰抜け外交や依存体質の防衛問題、中央集権システムの疲弊等、内憂外患の深刻な問題は挙げればきりがない。「救国内閣」には、国家レベルの喫緊の課題を改革の道筋をつけるところまで取り組んでもらう。

これには、与野党はもちろん、現在のシステムにより既得権益を享受している団体などから、とても強く激しい抵抗が予想される。こここそ「本物の龍馬」になりえるかどうかの決定的瞬間だと認識し、私たち龍馬プロジェクトのメンバーはあらためて日本全国を駆け巡り、一人ひとりの国会議員や閣僚、政党幹部等に三顧の礼で協力を要請する。

「国家が崩壊していくのを座して待つよりも、私利私欲や党利党欲を抜きにして、 日本の政治家もやる時はやるのだということを国民に示そうではありませんか!」と繰り返し繰り返し説いていく。

この段階で、地方議員─首長─国会議員という「縦のつながり」が構築される。国政の分かる地方議員、地方政治の分かる国会議員という、いままでのようにしがらみや選挙だけで結びついた関係ではない、真に日本を変える「縦の流れ」が構築され、以後、地方の声が確実に反映された国家政策の推進が加速していくことになる。



7、政治家や官僚などの既得権益者から主権を国民に返還する  国民への 「大政奉還」



同志となった地方議員が、救国内閣との連携により「地域自立型道州制」の実現など、江戸時代の版籍奉還に匹敵する程度のインパクトを起こし、成熟国家にふさわしい国家像として、中央集権から脱し、既得権力をもつ者(当時でいうところの武士、現代でいえば政治家と官僚)の権限をいったんゼロベースに戻す。

「内憂外患」にあって、明治政府が中央集権体制をわずか10年で推し進め、富国強兵政策により、日本を欧米列強の植民地化から守り、近代化を実現させた功績は計り知れない。ところが、現代の財政破綻や教育崩壊等の問題を見れば、その中央集権体制が機能不全を起こしていることは、誰の目にも明らかであろう。

主権を国民に返還するための国家システムを再構築する運動に、当事者意識をもって積極的に考え、行動する。いわば、政治家や官僚から国民への「大政奉還」を地方議員が主導していく。



8、 規範形成教育と地方の実態に即した教育を行なう



国も地方も、「人材」が命であることはいうまでもないであろう。ところが、現代は問題が起きてから対処するという「事後処理国家」になっており、児童虐待が年間4万4210件(厚生労働省資料)、自殺者は年間3万2845人(警察庁まとめ)、自己破産申請数が12万6265件(最高裁集計)という異常事態になっている(いずれも平成二十一年の資料)。

これは教育という観点から分析すると、中央集権体制により「学ぶ教育」から「教える教育」になっていること、また、技能教育優先で「人格教育」が行なわれていないこと、さらに「規範形成教育」が行なわれていないことに問題の本質があるといえる。つまり、教える主体である教師は、生徒の理解度を確かめることができないまま、規範意識をもたせることなく、ひたすら技能教育ばかり教えてきた弊害の表れといえるかもしれない。

そこで、江戸期に行なわれていた日本伝統教育に学び、現在行なわれている教育とは別に、人格形成を目的とした必要最低限の「規範形成教育」を初等教育に盛り込み、全国レベルで実施する。高校大学などの高等教育は、全国一律の紋切り型教育政策をやめ、地方ごとの実態に即した教育改革を強力に推し進める。ここでいう教育の対象は子供だけではなく、親学など大人への再教育を同時に行ない、地方の未来を担う多様な人材が輩出していくことに全力を尽くしていきたい。