それは【神々との対話の記録】である。 | ゆるゆる。

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最近、人生の目的を「修行」から「人生を楽しみ尽くす」ことにシフトしました。
自作の陶芸薪窯《風神窯》で塩釉焼(えんゆうやき)の食器や神具、飾り物をつくる陶芸家の、趣味日記。
今日もしあわせをありがとう!

 

 

 

 

「良い嫁ぎ先に出会えて良かったね」

「見初めてもらえて良かったね」

「我が子が嫁に行くのはどんな氣持ちだい?」

 

うつわを求めてもらう時にはそう言っていただくことがままあるのだけれど、実はこの「我が子」という表現に、私は何故か強烈な違和感を感じてしまう。

だからそんな時、私は「ありがとうございます」としか言えなくなって、後には胸の内にもやもやとした思いが残る……。

 

ということを、私はこれまで誰にも話したことがなかった。

 

 

 



ちょっと前のこと、結婚十五周年のお祝いにとスープカップを色違いでお買い上げくださったあるご夫婦がいらっしゃいます。

その時戴いたメールがあるのですが、そこには何よりも嬉しい言葉が沢山あり、しかも届いたうつわも氣に入っていると言っていただけて本当に感激でした。

改めて、ありがとうございます!

 

さてそんな奥様とのメールの中で、上述した「我が子」に通ずる言葉がありました。

「スープカップの産みの親」

 

何とも言えない氣持ちです。

確かにそれを作ったという意味で間違いではなく、それ以外に適当な言葉なんて逆に見つからない。

100%状況を的確に表している言葉なのに、何故自分はこんなにも引っかかっているのか。

 

 

 

だから、この際だからと深く心に潜って考えてみる。

私はそもそもうつわを作ることを目的としていない。

 

ちょっと前なら、「私にとって陶芸とは表現のための一手段です」と答えていた。

それを「よく分かる。自分もそうだから」と言ってくれる友人もいるから、創造よりも表現を在り処とする人たちは少なくとも一定数いるんだと思う。

 

けれども、いまもそうなのだろうかと言うと、どうも違う氣がする。

うーむ、何だかよく分からなくなってきた。

 

 

 

そもそもうつわを作ることを目的としていないなら、どうして私はうつわを作り続けているのだろうか?

 

——ああ、そういうことか。

うつわをつくる全工程でもっとも楽しい時とは、実のところ“うつわから離れている時”なのだ。

 

こういうことは窯を焚いている時に一番起こりやすいのだが、うつわをつくりながら心が全く別の次元に飛んで行ってしまっていることがある。

そんな時、私は“何かの境界を越えた向こう側”で、この世界の靈妙な理に触れている。

 

それを私は「火の神と語らう」と言っているのだが、この「神々と語り合っている瞬間」が一番楽しい。

己の心をよくよく見つめてみたら、私はどうやら、そのようにして「宇宙の真理に触れること」が本当に好きなことであり、それこそを楽しんでいるのだと氣付いた。



 

だからお返事はこんな風になった。

より伝わりやすいようにと思って書き直している内に、殆ど原型なくなっちゃったけど。

 

——うつわを自らの子どものように思う陶芸家は多いと聞きますが、改めて考えてみると私はちょっと違うみたいです。

というのも、実のところ陶芸そのものよりも、火や土を通じて神々の世界に触れることの方が嬉しく、そのようにして生まれた「神々との語らいの内に生じた掛け合いの記録」こそを、私は「うつわ」だと感じているようなのです。

だから私にとって、出来上がったうつわは「我が子」「私の作品」というほどのものではなく、「いつの間にかそこに在った(成った)、語って聴かせられない不思議な物語」という感じでしょうか。

 

 

“議事録”

 

ふと心に浮かんだ言葉はちょっと殺伐とした雰囲氣が漂うものだったが、私の感覚をとてもわかりやすく表していた。

——神々との対話の記録。

 

即ち、うつわとは“言葉で記されない本”。

魂の感覚で紐解けば、そこには神々の叡智が眠っているだろう。

 

いまは静かに、求められる時を待つのみ。

 

 

 

こんな風に書いてみると、我ながらめちゃくちゃワクワクしちゃうな!

次はどんな記録になるかね!

 

予めどんな対話にするかを決めるなんて、人の身で神をコントロールするかのような行為はできない。

 

神の心も人の心も、風の吹くまま氣の向くままに。

 

 

 

奥様、私も知らない私の心を教えてくださり、ありがとうございました!

 

 

 

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