数週間前にイスラム国の人質事件が日本を揺るがしましたが、少し背景など私の思うところを整理したく思いました。
*イラク戦争後のアメリカの対応
サダムフセイン独裁政権が崩壊しアメリカの傀儡政権のようなものが建てられましたが、テロでの抵抗は止むことはなくイスラム国の台頭まで許してしまいました。
世界の警察的な役割を果たしてきたアメリカですが、以下のような国内状況が原因かと考えています。
・アメリカの財政難が深刻で軍事費の削減が必要だった。
・シェールガスの発見で中東の石油に頼る必要がなくなり中東地域への関心が低くなった。
・イラク戦争の被害者やその親族を中心に、イラクから撤退の気運が高まった。
*アメリカ撤退後のイラク国内状況と隣国シリア
テロの耐えないイラクからアメリカ軍は撤退しましたが、倒されたサダムフセインのスンニ派政権に変わりシーア派中心の傀儡政権が建てられたもののスンニ派を極度に冷遇。サダムフセイン政権で活躍した国家運営知識が部分的にせよ有る人たちが、過激派アルカイダの影響を受け過激になって行きイスラム国を打ち建てました。
そして隣国シリアでは、アサド政権が生物兵器まで使ってしまった為に人々は怒りに震え、イスラム国に参加し残酷な行為が当たり前になってしまったものと思います。シリア政府軍は一般市民に対しても残酷な拷問や虐殺を行ってきました。一般市民の心の中にも恨みが生まれ、資金力がありシリア政府軍に対抗できるイスラム国に賛同する人が増えていったのは当然です。
*イスラム国の求めているものと戦略
イラク戦争後に多くの人々が亡くなっています。家族や友人を殺された人たちの怒りは、アメリカやその友好国に対して向けられ報復を誓います。これが1番の目的と思います。
この勢力を大きくするためには賛同者を増やす必要が有り宣伝や理想が重要になってきますが、この宣伝で世界の多くの不満を持っている人たちからの賛同を得られることに気づいてしまい、イスラム国戦士の4割が外国人と言われる状況になっているようです。
欧米にいるイスラム教徒たちは難しい立場に追いやられている人も多いので、こういったイスラム国の宣伝にのってしまうのではないかと思います。また中国のウイグルやロシアのチェチェンなど独立を求めているイスラム教徒の人たちもイスラム国の戦闘員になりえるターゲットとして重要視されている事と思います。
罪のない人質の残酷な公開処刑は人道的問題が重なる為に大きく伝えられ、宣伝としての効果は絶大です。
*日本の対応とイスラム国の現状
日本は長らくイスラム地域と友好関係を築いてきました。オスマントルコはロシアの脅威にさらされていた時代に、日露戦争で日本が勝利し一時的ではあっても助けられています。また日本はアメリカとも太平洋戦争で闘いました。キリスト勢力に辛酸をなめさせられてきたイスラム国家にとっては良い印象のある国です。
また資源に乏しい日本としては石油資源の豊富なアラブ諸国を技術的にも資金的にも援助することで友好関係を保ってきています。日系企業は技術を極力渡さない欧米企業よりも協力的なイメージがあります。
そして恐らく今回の日本政府の人道的目的での資金援助も、こういった活動の延長上のものだったものと思います。しかし資金的に追い込まれているイスラム国にとっては、対立している隣国に対しての資金援助は大きな問題です。戦争中の彼等にとって、その資金が人道的目的に使われるなどということを信じる余裕は全くありません。
イスラム国は手に入れた石油工場なども空爆で破壊され、資金的に厳しくなっています。また海外の資金的支援者も減ってきています。何とかこの状況を打開する為に人質殺害を行い宣伝し、賛同しやすい人達に存在を知ってほしいと考えていることと思います。イスラム国は後藤健二さんとリシャウィ死刑囚の交換を要求してきましたが、これもテロ行為を行った人を助けようとする仲間意識強化の宣伝のように思います。
宣伝としては大成功したように見えますが、戦略的には失敗したのではないでしょうか。過度の過激な宣伝に多くの国が危機感を覚え、重い腰を上げざるを得ない国も増えてきました。この宣伝によって各地で不満を持ったイスラム国に賛同する人々がテロを起こす危険性は確かに高まりましたが、少なくとも空爆は続きイスラム国はより困窮していくことが考えられます。恨みと怒りが生み出す報復の繰り返しなので早急な解決は難しいかと思いますが、テロ国家が強大になることは防げるのではないかと考えます。
*殺害されてしまった人質
人質となった湯川さんは民間軍事会社を設立した方との事で最初は危険な人かと思いましたが、ブログを見てみますとあまり現状を理解されていなかった素人の方のようにも感じました。
フリージャーナリストの後藤さんにシリアで反政府軍に拘束されていた湯川さんは助けられたことで2人は知り合ったようですが、素人の湯川さんらしいです(失礼な表現になってしまい申し訳ありませんが)。そんな湯川さんが後藤さんにとっては何となく可愛かったのかと思いました。
慎重な後藤さんはイスラム国と何らかのコンタクトをとり、湯川さん救出に向かったと言われています。後藤さんのブログを少し見せてもらいましたが、プロなので活動には非常に注意されているのが分かる為、前持ったコンタクトを取っていた可能性は非常に高いと思います。しかし追い詰められたイスラム国にとっては騙された鴨でしかなかったでしょう。
後藤さんのブログを見ると現地のガイドなどをしてくれていた仲間が段々と亡くなっていることが分かります。そして彼は何とか未だ生きているといった思いを持っておられたようです。惜しい人が殺害されてしまいました。
*フリージャーナリストにならなくて良かった自分
私が高校生のころ湾岸戦争が勃発しました。そのころ日本人ジャーナリストがサダムフセインと会見しテレビで話題となっていました。大学生になり、気づいたときにはそのジャーナリストが私の最も信頼する先生になっていました。稀ですが今でも電話を掛けてきてくれることがあります。
当時の私は海外志向が強く第一志望が海外で事業を興すこと。第二志望がフリーのジャーナリストになることでした。
フリーのジャーナリストは実際厳しい世界で、最初は戦地から帰国し写真をメディアに1枚数万円で買ってもらうというようなものです。そのため先生は私が危険も伴うフリーのジャーナリストになることに対しては悲観的でした。
後藤さんが家族のことを思い自分の身を案じているブログを見ると、今ではフリーのジャーナリストにならなくて良かったと思います。
しかし彼が殺害されたことは大変残念です。
*迷惑なイスラム国という名称
この過激派組織が自らを呼んでいる名称の直訳がイスラム国ですが、多くの穏健派イスラム教徒にとっては非常に迷惑な名前です。ここでもイスラム国と呼ばせて頂きましたが、イスラム教徒に対して理解のない人々が世界に多いのは事実で、誤解する人が増えないように日本でも呼び名変更が主張されるのは理解できます。
日本も思い返せば事件を起こした過激な宗教集団が幾つかあります。世界でもたくさん有ります。理解不足によって善良な人々を中傷するような人々は危険で、同じく過激な犯罪集団になりえるものと考え危惧するところです。ムハンマドの風刺画などは画家に懸賞金をかけているイスラム国の賛同者を増やすようなもので間接的に犯罪を増加させていることと考えます。
*独裁開発型国家
現状や背景など色々考えるところではありますが、やはり最後に期待するところは平和への道です。独裁と言う言葉にあまり良いイメージはありませんが、アジアの多くの国が独裁開発型の国家として発展してきました。国家が豊かでない状態では軍事力を後ろ盾に持つ国家権力が絶大で開発を主導していきます。例え独裁政権であっても、彼等の方針に間違いがなく国民を思う気持ちがあれば発展し、失業率など治安が悪くなる要因も減っていきます。最初は独裁色が強くとも、国を安定させ発展させる政権がこの混乱した地域で生まれることを期待します。
さて家内の親戚の女性が久しぶりに遊びに来るそうです。イスラム教徒でして最近結婚したそうですが、その旦那さんがイスラム教の勉強のためにヨルダンに留学に行くとの事で彼女もついていくと聞いています。ヨルダンの敵国のイスラム国を意識している人ではないことを祈ります。