ふと気づいた。末満さんの演出作や『エリザベート 』と『黒執事』(原作物)とかは公演3回ぐらい平気で観てきた。あと遥か昔宝塚歌劇。これは最推しが出てたから必然的に観てた。今回なんの予備知識も好きな演出家とかでもないのになぜ3回も観るのだろう?雷の鳴るベートーヴェンのタイトルバックを観つつ「しまったかな?」と思った



脚本・歌詞
ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲
シルヴェスター・リーヴァイ
演出
ギル・メーメルト

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(孤高の音楽家) 井上芳雄
アントニー・ブレンターノ
(ベートーヴェンの想い人“トニ”) 花總まり
カスパール・ヴァン・ベートーヴェン
(ベートーヴェンの弟) 海宝直人 小野田龍之介
ベッティーナ・ブレンターノ
(“トニ”の義理の妹) 木下晴香
バプティスト・フィッツオーク
(野心家の弁護士) 渡辺大輔
ヨハンナ・ベートーヴェン
(カスパールの妻) 実咲凜音
フェルディナント・キンスキー公
(ベートーヴェンのパトロンの一人) 吉野圭吾
フランツ・ブレンターノ
(銀行家であり“トニ”の夫) 佐藤隆紀(LE VELVETS) 坂元健児
ゴースト オブ ミュージック 家塚敦子 中山 昇 中西勝之 岡崎大樹 鈴木凌平 堀江慎也

樺島麻美 松島 蘭 横山博子
川島大典 後藤晋彦 田中秀哉 俵 和也
福永悠二 村井成仁 横沢健司
彩橋みゆ 池谷祐子 石原絵理 大月さゆ
島田 彩原 広実樋口 綾吉田萌美

ショルシュ/子供時代ベートーヴェン 西田理人 三木治人
マクセ 井澤美遥 長尾侑南 若杉葉奈

ベートーヴェンというとあの顰めっ面で胃痛持ちの小難しい人物像が浮かんでくる。その手の逸話も色々あるし、モテなかったイメージしか無い。
それが音楽に対して誠実で、誇り高く、ラブストーリーを繰り広げるのだから物語って素晴らしい。
音楽がベートーヴェン作曲の物をモチーフに、いやオマージュか?兎に角ベートーヴェンの曲やクラッシックが好きな人なら、最初からすんなり楽しめただろう。
あ、だから東宝さんがCDを宣伝してたんだ。
あまり詳しくない私みたいな人や、クンツェ・リーヴァイコンビの『エリザベート 』や『モーツァルト』がイメージに残っているとちょっと戸惑うかもしれない。傾向がまるで違うのだから。
一幕の前半はベートーヴェンが貴族とやり合ったり、その辺はモーツァルトと一緒なのだけど、モーツァルトとはキャラが違うからか、彼のストーリーはぬるっと進んでいる様に感じる。「自業自得じゃん」と思う事もあり悲壮感を感じたのがクライマックスの辺りぐらいで、それまでの話ではそこまで感情は動かなかった。私の感性が鈍いのか?逆に女性のトニの方に感情移入していた。
今作、黒いバックに花を添える様に女優陣が輝いて華やかにしてくれてたように思う。

花總まりさん
花様が出ると空気が明るくなって柔らぐ
そして名曲ばかりだから歌がしっかりしてないといけない。なぜこの役が花總さんだったのかわかる気がした。

このまま女優陣いこう。

木下晴香さん
『ファントム』以来です。あの時も綺麗なだけじゃないなとは思っていたのですが、上背があって花もあるし、以前より舞台の立ち姿もいい…花様の卒業で終わった私の『エリザベート 』
手、腕の動きや所作に気をつけて細かくしてもらえば、この方ならまた足を向かわせてくれるのではないかと期待を持ちました。

実咲凛音さん
初めましてでしたが、清楚な感じの女優さんで、他の作品も見てみたいです


主役ベートーヴェンの井上君
実を言うと3回目どうしよう、観るの辞めようかなとか思った一幕前半でしたが、後半あたりから井上君の歌がガンガンこちらを見ろと攻めて来ます。雷様までバックに従え雷神の様です。
ただの偏屈ではない。音楽と恋に生きた純粋な男
これが『ベートーヴェン』だと!
二幕に至っては花様と2人がかりで攻めてくる。
クライマックスなんかは鳥肌物でした。
お客様の誰かが「井上一人芝居」と言っていたけど、井上君の歌をこんなに聞いたことはなかった。
真面目な役なので何かやりたそうな仕草がおかしかった。

マチネの後ソワレも観たわけですが、ここで私の考えが変わりました。
2度目で情報が入っているのでその目で見直しました。
と、すんなり入ってくる。この作品はまるでスルメの用に噛めば噛むほどジワーっと美味しくなるみたいです。
細かい演出や工夫もあり良かったです。それから昨今の物価高で大道具や衣装がバカ上がりしてしまいチケットが高騰に付与してますがその為か、バックにCGを使った作品が増えています。今作もそうでした。照明も印象的で、衣装も素敵でした。床の模様は意図したものですよね?
椅子を工夫した演出も好きでした。
ソワレは凄く良い1階席でオペラグラスが必要なくなり喜んでましたが、低くて床とか見えない。
2階から観たマチネの方が細かい演出もわかりやすかったです。せっかくのラストシーンが前の方では見えなくて演出の意図が届きませんでした。
なので3回めの観劇も2階からで、観やすく喜びました。
酒場のシーンも好きでアンサンブルさん達が、壁ドンとか食器鳴らして工夫してて色々な演技をされてるのが楽しかった。
音楽も途中「これロックミュージカルだったっけ?」というくらいアレンジがありました。
ただ、ミュージカルというと何か『看板』になる曲が必要です。あとでくちづさんだり、歌と共にシーンが甦るメインになる曲が。多分この曲がそのつもりで作った曲かなというのがあったのですが、私にとっては「う、うーん」となってしまい、それがちょっと残念でした。

他の方々
海宝さん
爽やかで、声も伸びがあって良かった。
愛する人への愛が溢れ出ていて、それが伝わらない兄にもどかしさを感じているようでした。

小野田さん、
3回目で観れました。危ないところだった。
『ミス・サイゴン』以来です
感じがかなり変わりますね。あの時は身体も作っておられたからかな?井上君のアドリブじゃないですが、凄く優しく愛を歌ってます。感情の起伏もはっきり伝わってきて、「愛を信じない」兄を心配する姿が哀しい
兎に角お芝居が上手い人。私の印象ですが。

坂元さん
今回佐藤さんと縁がなかったので3回とも坂元さんです。TVや円盤では観てるのですが中々縁がなくて今回やっとでした。お芝居や歌の上手い人という印象が強いのですが、難しい歌を怒鳴りながら歌っておられて、高音がちょっと私の耳(最近遠いと言われる)には弱く聞こえた部分があって「ん?」ってなっちゃいました。

吉野圭吾さん
曲者ですね。 演技も圭吾さん自身も。
客席にさりげなくファンサするシーンは上手が羨ましかった。
でも満足。

渡辺大輔さん
扮装写真を見た時「え?」舞台を観て「え?え?」
こういう役もされるというより出来るんだと吃驚しました。二の線の役者さんも必要だけど、脇を締める役者さんも必要です。今度はどんな役に挑戦か見てみたい。

ゴーストのダンサーさん達は『エリザベート 』でお馴染みの方もいて、まるでトートダンサーの様でしなやかにベートーヴェンに寄り添ってます。
場所が狭かったからなのか、一幕ラスト手前でお一人振りなのかと思う勢いで転ばれ、二幕でもバランスを失うシーンがあり心配でした。翌日もちょっと…お身体大事にしてください。

子役さん達
西田君と三木君
『エリザベート 』で子ルドルフをやった2人
ちょっとの間だったのに大きくなってました。子供の成長は早い。以前よりしっかりしていて将来が楽しみ
伊澤、長尾、若杉さん
3人さん様で良かった。
伊澤さんは『SPY×FAMILY』のアーニャもやってて、その小ささに吃驚。なのに歌と演技にダンスに大人に混じって負けてない。将来どんな女優さんになってるのかな?女優さんじゃなくても大丈夫だよーと観ながら心の中で声かけてました。

お芝居が終わりカーテンコールになっても、まだ『ベートーヴェン』は続いてます。
カーテンコールの後、井上花總のお二人が仲良く去っていく姿に安心感がありほわっと暖かい気持ちになった。