いよいよ、けんた君が1泊、うちに泊まる。


また10時に乳児院に迎えに行き、着替えなどを預る。パンツやズボンだけじゃ無く、服も揃えていかないといけない。

家に帰る途中、枕や布団を買いに行った。

せっかくなら自分の好みの方がいいだろうと、ベッドは台座だけを用意していた。


セルフレジで、楽しそうにバーコードを読み取っている。


大荷物をカートで運ぶ後ろ姿が頼もしい。


なんでも「けん君がやる!」と言うので、お任せしている。


お昼に親子丼を食べ、また公園に出かける。


今日は鳩を追いかけるのに夢中で、あざ笑うかのように飛び立つ鳩たちを、どうにか捕まえたいらしい。


鳩が逃げるのを、犬のタンゴがいるからだと気づいたけんた君は、


「じんべさん、タンゴと一緒にここで動かないで!」


と真剣な顔で手のひらをこっちに突き出し、一人でソロソロと鳩に近づいていく。

確かにタンゴがいる時よりは接近できたものの、やはり鳩は飛び立っていく。


気づくと4時間が経っていた。


おもちゃが無くても、遊具が無くても、これだけ遊べるんだと感心する。


そういえば、自分もそうだったなと、40年以上前の記憶を辿る。

ただの茂みが秘密基地だったし、縁の下に潜む猫を捕まえたかったし、見えない敵がいて、自分はヒーローだった。


5時には送り届けなきゃいけない外出と違って、今日はのんびりとお風呂に入り、ご飯を食べ、買ったばかりの布団に潜った。

寝室には3人分のベッドが並び、ぎゅうぎゅうだ。


うちに泊まることに何の違和感もないらしく、スヤスヤとよく寝てくれている。


明日はツレも休みなので、みんなで公園に行けそうだ。


明日が楽しみ。


けんた君も、そう思ってくれていたら嬉しい。