夏休みに入り、去年同様、学童と放デイでやりくりしながら、ケンタの居場所を確保している。
先日、俺が早く出勤しなくちゃならなくて、ケンタの送り出しをツレに頼んだ日があった。
その夜ツレが、
「ケンタがさぁ、『なんでオレだけ夏休みも学校に行かなきゃなの?』て聞くんだよ。」
と朝の様子を教えてくれた。
「で、なんて答えたの?」
聞くとツレは、「そうだなぁ」と答えて、あとはケンタに付き添って、学校まで行ってくれたと言うのだ。
とうとう来たか…
正直、いつかはケンタがこうやって、周りと自分を比較しだすだろうと覚悟していた。
今回は、学校に着いてしまえばいつものように元気いっぱいで、大きな支障はなかった。
でもいつか、母親のこと、里子であること、俺らがゲイであること、そんなもっと別のことを比べだす。
その時、俺はなんと答えればいいだろう。
今朝は俺と一緒に家を出たケンタ。
いつもなら友達と登校する道を前に、やっぱり
「なんでオレだけ…」
とブスくれる。
「そうだなぁ、俺も一人で仕事に行かないといかんから、お互い頑張ろうぜ」
俺はそう言ってコブシを出した。
ケンタは、まあ仕方ないかとコブシを合わせてくれる。
周りと自分を比較したとき、キツイのは『自分だけ』という仲間が見当たらない状況だ。
ゲイである俺は、その気持ちに少し覚えがある。大人になって、自分だけじゃないんだと知った時、どれだけ世界が広がったか。
ケンタは、これからその扉を、自分の力で一つ一つ開けていかなくてはならない。
ケンタがそれに疲れてしまった時に、俺はせめて、彼が安心して休める場所を作ってやれるだろうか。


