途中、犬に引っ張られて、派手にコケる場面があった。
あ、こりゃ泣くな
と覚悟したものの、自分で起き上がり、唇を震わせながらも
「いたかった…」
と呟いたきり、また駆け出して行った。
俺なら絶対泣いてる。
夕方にお風呂に入れ、乳児院に送り届けた。
とてもスムーズな一日で、とても楽しい一日だった。
気を遣われたなぁ、と思う。
わがままを撒き散らして欲しいわけじゃないんだけど、安心できる場所って、何をしていても許される場所なんだと思う。
無言でボーっとしていてもいいし、お手伝いなんてせずに、おもちゃに夢中になっていてもいい。
痛かったら、泣いてもいい。
けんた君にとって、うちがまだそうではないのは仕方ない。
これから少しずつ、安心できる場所にしていけばいい。