ツレの都合がつかず、児童相談所には俺一人で向かった。

所長面接以来だ。あれからまだ4ヶ月しか経っていない。

会議室に、係長、里親係、ケースワーカー、心理士、NPOのスタッフが集まっていた。


委託を予定している子は、けんた君。

5歳の男の子だ。


名前と年齢だけを知らされて、今日ここにやってきた。



ケースワーカーの方から、家庭の状況や委託理由の説明があり、心理士の方から、けんた君の様子や性格を教えてもらう。


一年前、家庭の事情で緊急一時保護され乳児院に入り、ずっとそこで暮らしているという。



一時保護が一年続いてることが異常だったし、本来2歳までの子供が対象の乳児院に、5歳のけんた君がいることも不思議だった。


それについては係長から説明が入る。


保護当初から、家庭での養育はしばらく難しいという判断で、実親さんには里親に預けることを推していたものの、ずっと了解が得られなかったらしい。

それどころか、支援サービスもことごとく拒否され、膠着状態が続いていた。


受け入れは、児童養護施設に空きがなく、乳児院での生活が続いている。


最近になって、実親さんの状況が徐々に改善し、1年越しでやっと里親委託に同意が得られたのだ。

目標として、小学校に入る前には、実親さんのもとに返したいとのことだった。

と言うことは、最低でも一年ちょっとはうちで暮らすことになる。


「今回も、男性カップルの里親さんということは伝えています。」

と係長は言った。

「むしろ、何というか乗り気で…」

と苦笑いしながら小声で続いた一言。


実親さんが、どんな気持ちなのか、推しはかることしかできないけれど、里親に預けるって、やっぱり不安だろうと思う。

返してもらえないんじゃないかという恐怖、自分への苛立ち、里親への嫉妬…


そういう気持ちに対して、ゲイカップルという立場がうまくはまってくれるなら、嬉しいとまでは言わないけど、まあ、よかったなと思う。


今度、実際にけんた君に会うことになった。

それを経て、委託を受けるか決めることになる。


写真もまだ見せてもらえない、コピーの許されない記憶の中だけの書類の文章から、どんな子なんだろうと想像を膨らませている。