実は昨晩、とーる君が泣き出す場面があった。
テレビでアンパンマンを見ていたところ、夜も更けてきたので
「そろそろ寝るよ」
とテレビを消した。
すると、とーる君は無表情のまま、座り込んで動かない。どうしたのかと見ていると、やがて両目からポロポロと涙がこぼれ出した。
「ママァ…」
と小さな声が口から漏れる。
これまでびっくりするくらい気丈に振る舞ってたけど、とうとうガマンの限界が来てしまった。
俺がオロオロしていると、ツレがとーる君をだっこして、トントンとあやしてくれた。
「とーる君はがんばっとるよ」
穏やかな声で励ましてくれたおかげで、やがてとーる君は泣き止んで、メタボ気味のツレのお腹をさすりながら、
「おなか、出てる」
と容赦ない感想を述べていた。
「とーる君だって少し出とるやないね!」
不意の仇討ちにおとなげなく反論するツレ。
あまりにも密な3日間だった。
とーる君のいなくなった家は、いつも通り、犬がはしゃぎ、猫がくつろぎ、ツレがご飯を作っている。
この穏やかな日常のありがたさを噛み締めながら、無事に送り返せたことにホッとしている。