実習の2日目は、施設所長や心理士による座学もあった。


その中で印象に残ったのが、トラウマを抱えた子供たちに見られる問題行動についてだった。

じっとしていられない、暴力的になる、いい子すぎるなど。


特に性的虐待を受けた子供たちでは、他者との距離の取り方がわからない、という問題も出てくるらしい。

幼い子供たちがいる施設の壁に、パーソナルスペースや人への接し方をイラストで説明したポスターが貼ってあって、問題行動が机上のものではないんだと感じた。

国は国連の指針などを受けて、施設での養育から里親家庭での養育にシフトしようとしている。目標は、親元で暮らせない子達の半分以上を里親に託したいとしているけれど、実際の全国平均は2割を少し超えるくらい。


そんな中、この町では5割を超える子供たちが里親のもとで暮らしている。名物市長の舵取りのおかげか、児童相談所の対応もきめ細かい。


一方で、施設で暮らす子供の人数が減ったことによる変化があるという。

これまで大勢の集団生活の中で埋もれていた子供一人一人の不満が、職員にぶつけられるようになったのだ。


トラウマを抱える子供の怒りが噴出する時、いくら子供は悪くない、と頭では分かっていても、支えたいと思っている子供から発せられる数々の罵詈雑言は、大人の心をえぐってしまう。


結果、職員は疲れきって、辞めてしまう。


「なかなかスタッフの成り手がいなくて」

と案内してくれた方は苦笑いした。


良くしようという変化であっても、どこかに歪みが生まれてしまう難しさを感じる。


そしていつか子供と暮らす時、もし泣きわめかれたり暴力的だったら、自分は対処ができるんだろうかと不安になる。