Echo de chouette

Echo de chouette

横山仁子の徒然日記です。
音楽の話・日々の気持ちを気ままに綴っていきます。



39年も前のこと。NHK番組「ルーブル美術館」で美術品をより一層輝かせる、広大な美しい音楽が流れていた。美術品に合わせ、クラッシック音楽を使っているのだと思い込んでいた中、イタリアの作曲家ENNIO MORRICONEによる音楽と知った。テレビの画面へマイクを向け、テープに録音しては聞き入った。

その時のテープが出てきて、久しぶりに手に取った。こうやってマエストロが関わった映画を追いかけている今へ繋がる時の流れに、不思議さと幸福感をおぼえた。


前回、"3"という数字が好きで…と綴ったけれど、今回は3+1のおまけ付きとなった。


「死刑台のメロディ」は、1927年の史実。悪役でしか観たことないジャン・マリア・ボロンテの異なる顔の演技力、カンヌ映画祭主演男優賞を得たリカルド・クッチョーラの卓越した演技力に心酔した。人間の欲望の悪性化を目の当たりにしながら、その悲痛なシーンをモリコーネの音楽が愛で包み、ジョーン・バエズの歌声が希望を与えながら幕を閉じる。

サッコが息子に遺した手紙が心に染み入り、再びあの言葉を反芻したくて足を運んだ。


「ラ・カリファ」は、製作から54年を経て、日本で初公開。39年前に出会ったあの珠玉の音楽が映画とどの様に絡んでいくのか楽しみでならなかった。第一回目は、イレーネ(ロミー・シュナイダー)の美しさとドベルド(ウーゴ・トニャッツィ)のお父さんの渋味のある演技が印象深かったものの、ストーリーを追うのに精一杯。

2回目にしてやっと、イレーネの繊細な心理の変化へ寄り添いながら、甘美な音楽を浴びることができた。社会派映画の中に描かれた女性の心の動きには、平和への願いが色濃く描かれていた様に思う。


帰宅後、久しぶりにルーブル美術館のCDをかけてみた。ラ・カリファを含みながら、一層深く、一層広く美しい音の連なりが響き渡り、"映画が恋した音楽家"と出会った機縁の音楽に、胸がいっぱいになった。


私にとって最後の観納めの今日。3+1には復刻版のチラシが配布され、大きなおまけを頂戴した。武蔵野館の粋な計らいに感謝いっぱい❤️

2作品への上映にご尽力頂いた皆さんに心から感謝申し上げます。


2024.5.10






幾度となく"直感"というテーマでブログを書いているけれど、本日も"直感"にしたいと思います。


先日、大学時代の親友のご主人から画展のお便りが届いた。

これまで、ご案内を頂いても、一度も伺うことができずに失礼を繰り返してきている。

そして、今回も遠方へ出かける予定とピタリと重なってしまい、残念な気持ちになった。

ところが、ふっと、「行かなくいいの?」と、どこからともなく問いかけの声が湧き出した。

考えてみたら、親友とは文字では対話していても、10年は対面していない。ましてやご主人とは、30年以上のご無沙汰。

「本当に、行かなくていいの?」…出発前日になって、やけにその声が拡大していく。


そもそも本当に行けないのだろうか?

行けない理由って何?…遠くに行くから。

誰が行けないと決めた?…私。


行けないと思い込んでいる自分の決めつけを一旦保留にして、もう一度、考える。

行けないと思い込んでいるのは、私で、そもそも行こうとしているのか?行きたいと思っているのか?行きたいなら、300キロのハイスピードを誇る新幹線がある国に住んでいるわけで、こういう時こそ、その恩恵に与るべきなのでは?…等々、自分の体内で問答の繰り返しをした。


無意識に身につけた習慣とは、こんなもの。

脳内自動運転で、無理と決めこんでいた自分に気がついた。


…というわけで、昨日の早朝、新幹線に乗って、日曜画家・近藤正樹 「思い出の旅と映画 風景画展」へ向かった。

自分の習慣を一つ手放せた嬉しさが、差し込む朝日を一層清々しく感じさせ、

「人生は、毎時が旅。人生の主役は、私で、

全ての時の選択は、主役の私がする。1秒先も未来。過去は変えられないが、未来は変えられる。」と、

当たり前でありながら、当たり前にしていないリフレインをリピートしながら、新しい時へ胸を膨らませた。


さて、個展の場所は、横浜のエリスマン邸。

偶然にも、建物はチェコ🇨🇿の建築家、アントニン・レーモンドの設計建築によるもので、チェコ🇨🇿とのご縁を感じつつ、「もしかして、この建物が導いたのかしら?」と、あの時の直感を思い返した。

しかし、直感がいざなったものは…まだその先にあったのです。


まさかのサッドヒル❣️



個展開催の地下ホールへ入るや否や、続・夕陽のガンマンの決闘シーンとなった、あの場所が目に飛び込んできた。

モリコーネの♬黄金のエクスタシー♬と共に、トゥーコ(イーライ・ウォラック)が広大な墓所を駆け巡り、クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、イーライ・ウォラックの3人の目の動きが印象深く心に残る、円形の決闘場。

更に、"サッドヒルを掘り返せ"での熱い思いが集結した感激シーンの場所。


遂に叶った親友夫妻との対面が、予期せぬ夕陽に染まるサッドヒルのお出迎えもあり、直感から繋がった時の造形に感謝した。

映画と関連づけた風景画のアイデアにすっかりのめり込み、豊かな時を過ごした。


復路には、「本当に行かなくていいの?」が「本当に行ってよかった!」に変わり、改めて…直感とは、一瞬のことながら、神わざが伴う人間の長けた能力だと確信した。


2024.4.29









人はそれぞれに好きな数字があるという。

私は、幼い頃から"3"という数字が好き。

"3"に安心とバランスと力強さと幸運を感じているのだと思う。


3/22から公開されたドル3部作(マカロニウェスタンの3作品…荒野の用心棒、夕陽のガンマン、続・夕陽のガンマン)へ、それぞれ3回足を運んだ。

映画が恋した音楽家、モリコーネの音楽に魅了されているのは当然なことながら、約60年前の作品の役者の卓越した演技力、背景の自然、衣服やブーツの質感、馬の動き、馬装品、調度品、小道具…あらゆるものへ心酔しながら観入った。

そして、綺麗事では済まされない人間の感情や葛藤がマエストロの音楽によって愛に変わっていく瞬間を、大画面によって全身に浴びることができた。


殺伐とした都会を速足に通り抜けながら、この体感した確かなものがあれば、幸せだと思えた。


企画、進行、実現へとご尽力頂いた皆さんに心より感謝申し上げます❤️


2024.4.11