シンナーやガスをしていくうちに薬物に対する罪悪感や危機感のようなものは薄れていった。
嫌な事も何もかも薬物をやっていると忘れられた。
友達共会話もなくただひたすら薬物をする毎日に明け暮れていた。
家で一人でいる時を見計らっては、ガスをしまくり一日2缶も吸うこともあった。
幻覚幻聴もひどく、外に出る事もめんどうだった。
ある日、思った時間より早く姉が家にかえって来た。
部屋に充満するガスの匂い・・・
爆音で流れる音楽・・・
ガスの空き缶・・・
姉でさえもこの異様な様子が分かったらしい。
すぐ、家中の窓を全開にした。
そして、
「あんた気持ち悪いよ。もう妹じゃない。」
と言い放ち、出て行った。
家族にも本当に見放された気分だった。
友達も男もどうでもよかったけど、家族だけは私からは離れていかないと思っていた。
でも、離れていった。
そこからぎこちなくなったけど・・・
それでも、家族は傍にいてくれた。
まだ私は気付かなかったけど。
私を見捨てはしなかった。
でも、言葉にださなきゃ家族でも結局他人。
何も伝わらない。
言葉で伝えることって本当に大事だ。
毎日毎日ゆりと遊んだ。
シンナーを常にペットボトルに入れ、持ち歩いた。
一斗缶(いっとかん)をどうやって盗み出そうか作戦を立てたりした。
毎日毎日シンナーばかり吸っていたせいで時間の感覚も理性もなくなっていた。
ふっと記憶がなくなり、気づいたら見知らぬ場所にいる事や訳もなく駅の構内で大泣きしたりした。
一度、シンナーを入れたペットボトルがなくなり、警察署までいって聞きに行くまで私達は狂っていた。
ろれつも回らず、どこからどう見てもシンナー中毒だった。
ある日、いつも通り男達にシンナーを貰おうと合流したときそこに、同じクラスの男がいた。
彼は留年していて私より一個上だった。
そして、私がシンナーをもらっている男達の後輩だった。
これには本当に驚いた。
男達の地元は私が通っている高校のある場所だった。
そして、私のうわさは広まった。
シンナー中毒・誰とでもヤル女
そして、それと同時に私の携帯電話の番号までも流されていた。
それに気づかずシンナーにやられていた私は携帯にかかってくる男達と遊びまくっていた。
そして、新たな薬物に手を染めるようになった。
ある日、携帯に見知らぬ男から電話がかかってきた。
当時、適番(てきばん)といって適当に番号を打って電話するのがはやっていた。
その男(洋太)も適番だといっていたが、実際は私のうわさを聞いて電話したらしい。
これは後で本人が教えてくれた。そして私もうわさが流れていることを知ってしまった。
洋太は、特に手を出すわけでもなくただ話しをしたいだけだといっていた。
顔もかっこいいのに変わってるなとは思ったけど、なんだか悪い気はしなかった。
ゆりには私の男だから絶対てをださないでと忠告していた。
ゆりは所かまわず男に手を出す。
洋太と電話で話していて、今までの男と違って硬派な感じがして大切にしたかった。
2対2で会うはずが、洋太の連れが来れなくなり結局3人で遊ぶことになった。
洋太の部屋でくつろいで映画を見たり、雑談して今までになくまったりした気分だった。
でも、結局ゆりは洋太に手を出した。
信じられなかった。
洋太の事が好きだったとかそういうんじゃない。
でも、私と連絡を取っていた男にしかも手を出さないでと約束した相手に平気で手を出すゆりが信じられなかった。
私は部屋を飛び出していた。
なんだかくやしくて、友達にまた裏切られた気がして・・・
洋太が追いかけて来てくれた。
ゆりから無理やりキスされたといっていたけど、どうでもよかった。
その時、洋太の携帯がなった。
相手は来れなくなった洋太の連れだった。
近くの公園に来てるから、合流しようということだった。
その公園に3人で行くと見た目のバリバリのヤンキーがいた。
しかも、手に何か持っている。
ガスだった。
男はおもむろにガスコンロの先端を口にくわえ、それを吸い出した。
それを見た洋太は急に怒り出し、私達にも帰るようにいった。
今日はごめんといって駅まで送ってくれた・・・けど、私とゆりは興味本位で公園にもどった。
そこにはまだ男がいた。
一人空を眺めボソボソつぶやいていた。
私は何があるのか尋ねた。
「やったらわかる」
そういって、男はガスコンロを置いてフラフラ去っていった。
ゆりの裏切りでイライラしていた私はすぐそれを手に取り、男がしていたのと同じようにガスを吸った。
少し吸っただけで、シンナーと似たようなでもちょっと違う感覚が襲ってきた。
そのまま、さっきの事も忘れゆりと歩きながらガスを交互に吸って海まで来ていた。
そして何だか飛べるような気がして、海に飛び込んだ・・・
幻聴・幻覚がめまぐるしく頭の中をかけめぐり、目をつぶるとそこが現実世界じゃなく異空間のような感覚にとらわれた。
私は、ゆりに助けられなんとか現実に戻ってきた。
ゆりはガスは体に合わないとすぐ止め、シンナーに戻った。
シンナーを吸っている時にまことに出会った。
いつのまにか付き合うようになっていた。
全く記憶にない事だった。
でも、悪い人じゃなかった。
10コくらい上だったけどし、シンナーをしている時に出会ったくせに私にシンナーをやめろといってくれた。
今まで知り合った男に私にシンナーをやめろと言った男は初めてだった。
でも、まことには秘密が多く会うのは結局ホテルだった。
何をどう理解していいのか、信じていいのか利用されているのかわからなかった。
私は疑心暗鬼になり結局シンナーをやめられずにいた。
そして、私と連絡が取れないと母親に連絡をしお互い励ましあっていたみたいだ。
でも、私の母親は私が薬物に手を出しているとは夢にも思っていなかった。
そんな時、シンナーを貰っていた男達が逮捕され私達はシンナーの入手が出来なくなった。
そして私は簡単に手に入るガスにはまっていった。
家族が仕事や学校に行っている間、昼間からガスに酔いしれ現実逃避した。
夜はゆりと合流し街であそんだりゆりの地元で遊んだ。
まことと連絡を取るのもめんどくさく男とも遊ぶのをやめなかったし、思考回路で吹っ飛んでいた私はまことに聞かれるままに、男と遊んだことやホテルに行ったことも洗いざらい話していた。
そして、いつも彼を寂しい顔にさせていた。
まことは何でも許してくれると信じていた。
そして、私はまだまだ堕ちていった。
まことじゃ私を救えない。
私の寂しさを埋められない。
車の中には異様な匂いで充満していた。
男達の目はどこか爛々としていて、異様にテンションが高かった。
どうみても8コくらい年上だった。
車も今まで遊んだ男達とは全く違うもので、動き方もおかしかった。
平気で警察署の前を爆走し、クラクションを鳴らしあげた。
街からどんどん離れ、少し不安な気持ちだったがゆりと一緒だったのでどことなく安心していた。
どこか山道の方まで来ると、車を止めトランクからビニール袋とペットボトルに入れた真っ黒い液体を持ってきた。
袋の隅を結ぶと、中に液体を流し込んだ。
言われなくてもこれが何か分かる。
中学時代、知り合いの先輩がやっていた。
シンナーだった。
「今日はとりあえず黒ペラしかないけど、純トロはまじで最高じゃけぇ」
と意味不明なことを言っていた。
中学時代は、薬物なんか絶対ムリと思っていたけど、
高校生活での事などでむしゃくしゃしていた私はすぐ食いついた。
吸い方を教わった途端意識が吹っ飛んだ。
気がついたら、来ていたジャージが真っ黒に染まり男達がなにやら怒鳴っていた。
それでも、私は気持ちがよくふわふわした気持ちでどうでもよかった。
車のシートが汚れようと、男達に怒鳴られようと、ジャージが真っ黒になろうと・・・
ただ、この気持ちよさに酔いしれていた。
周りの事がどこか遠くの出来事のような気分だった。
そして、私達はいつのまにか体の関係を持つようになった。
シンナーをくれる代わりに体を差し出す。
相手が何人だろうとだれだろうとわけも分からず、みんなでシンナーをしながら・・・
その光景がただの猿のように思えて楽しかった。
私はあっという間にシンナーに魅せられた。