先日カブを80ccにボアアップした。メニューはシリンダーピストンとインマニ、カブ90純正キャブという相当にノウハウがある組み合わせ。そしてクラッチが滑るはずだから慣らしが終わる頃、オイル交換と同時に強化クラッチを組む事も説明しておいた。
それとキャブのセッティングに付き合わせた。これが濃い症状でこうなると薄くなるとかそういうのも見せながらキャブのセットをする。ホントはもうそこそこ分かってる組み合わせなんだけど、出来上がりをポンって渡すとなーんの知識も増えないんでお客さんとのトラブルが多くなる。
もしくは調子悪くてもそのままごまかして乗ってしまう。なもんで、めんどくさいけどそうやってセッティングを一緒に出すことにしてる。
実際こっちはちょっと動かせばだいたいの調子が分かる。分かるんだが、お客さん自身のスキルも上がらないとホントに調子のいい状態の細やかなセッティングを詰めて乗り続けることが出来ない。だから分かっていてもお客さんに乗らせて症状を伝えてもらうことにしてる。
話はちょっと逸れるが、車の方のプロが中華の125ccエンジンをカブに積んだ。キャブはVM22でメインジェットは何番だったと聞くのだが、その答えにあまり意味はない。ネットで見ると100番前後でとあるんだが、105番で調子がいいんだよねと。じゃあ105番なのだよそれは。
これもたまーに聞かれるんだが、良く釣れるルアーはなんですか?と。
それの答えにもあまり意味がない。だいたいのルアーは釣れるんだ、針が付いてるんだし。その場その時の条件で釣りやすいルアーの条件が変わる。条件で変わるものに普遍的な答えを聞こうとすることに無理がある。ジェットに番手があるというのはそういうことなんだ。
そして先日のお昼過ぎ、80に排気量を上げたカブが熱すぎてエンジンの調子が悪い、吹けないんだけどと連絡をもらう。ちょっと電話の感じじゃおれのせいにしようとしてる節がある。でもキャブセットの仕方を見ていた体験していたので、拙いながら説明は出来るようにはなってるんだ。チョークを引けばなんとかエンジンがかかるそうな、それでも吹けないらしいが、とりあえずキックは踏めるようだ。
一通り説明を聞いておれが出した答えは
「ガソリン入ってる?」
入ってるよ!!いやいや、そんな怒らなくても、でも入ってない症状なんだよね。で、なんとかうちまで乗って来られたんで診ることにする。
とりあえずコックをリザーブに入れて十数秒待つ、そしてキック一発エンジンはかかる。シートを開けてタンクキャップを外して直接中を覗く。やっぱりガソリンがないんだよ。
「え?それだけ!?」と驚いていたが、エンジンが完全に暖まってるのにチョークを引かなければかからないってことはガスが薄いってこと、つまりガソリンがないのだよ。
暑い中で困ったから正常に頭が回らないのも分かるけどね、涼しいエアコンが効いてる部屋で出した答えをもうちょっと素直に聞いてくれれば、真っ赤な顔していい汗かかなくて済んだと思うんだ。
「思い込みは正解から遠ざかる」
でも、そのバイアスがかからないようにするのは相当に難しい。生半可に自分でいじれたりすると、尚更間違えてるのにその方向で考えようとする。機械物はオカルト的には動かない。ちゃんと理由があってそうなってる。
ネットもいいとこもあれば悪いとこもある。簡単に事象から答えらしきものを導けるが、それが合っているのか間違っているのか、間違っているとしても勝手に信じてしまっただけでウソばっかりでもない。
ネットはあれば大概の事は出来ますよと言うが、果たしてそうだろか?ノウハウってのはネジの緩め方ひとつからある。それを端折って核心部分だけ抽出して分かった気になってるが、それはうわべだけでなにも分かってないに等しい。ただ分かってることが知ってる全てなんで、知らないことが分かっていない。分かってる範囲で答えを出そうとするからオカルト的発想になる。よく分らない物をお化けや妖精のせいにするようなもの、無理やり辻褄を合わせるからそうなる。
知らないってことを理解するって結構大事なことなんだよね。
という生意気言ってる自分でさえ、なーにも分かってないに等しいんだよねえ。