ハリーの災難
■The trouble with Harry
1956年 アルフレッド・ヒッチコック監督
ヒッチコックもお気に入りの、
ミステリーコメディ。
美しい秋のヴァーモントの自然が
総天然色で全編を覆いつくす。
登場人物たちの飄々としたタッチや、
細かいプロットはさすがヒッチ監督。
オープニングロールからしてキュート。
デビューしたてのシャーリー・マクレーンが
本当に魅力的。
赤い風船 ■Le Ballon Rouge
1956年 アルベール・モラリス監督

灰色にくすんだパリの街に鮮やかな赤い風船。
持ち主である少年から決して離れない風船。
まるで魂を持っているように。
やがて起こる不思議な出来事。
台詞といえば少年の発する「バルーン!」
の一声のみ。
それなのに、類まれなる叙景を持って、
みるものの心をとらえて離さない。
あの頃のパリでなら、こんなことが起きても
不思議ではないと思える。
空の魔術師、モラリス監督のくれる至福の34分。
知りすぎていた男 ■The man who knew too much
1956年 アルフレッド・ヒッチコック監督

ヒッチ監督お気に入りのJ・スチュワート主演。
旅行先で国際的犯罪に巻き込まれた家族。
時代を感じさせてくれるスパイ戦に、
果敢に立ち向かう夫婦の大活劇。
妻役のドリス・ディが囚われた息子に歌いかける
‘ケ・セラ・セラ’は映画史に残る名場面。
散々サスペンスを味あわせてくれた後に、
何事もなかったように元の旅行を続ける家族、
そのあっけらかんとした幕引きもヒッチらしい!
黒い十人の女
1961年日本 市川 崑監督

市川崑監督が描く、虚構とモダニズムの世界。
スタイリッシュな構成と、
モノクロームが生み出す、光と闇。
1人の男と、妻と愛人である10人の女。
女達は集まり、
煮え切らない男の殺害を計画する。
その集団の図の、
なんとクールでスリリングなことか!
山本富士子・岸惠子・岸田今日子・中村玉緒、
そうそうたる時代のビューティー達の競演。
非現実的な設定ゆえに、
時代を超越して今なお新鮮に映る。
幸福 ■ Le Bonheur
1965年フランス アニエス・ヴァルダ監督

あまりにも清清しい森、つましくも美しい家族。
ありのままのパリの生活。
何もかもが輝いていてきらめきに満ちた映像。
それなのに私は長い間どうしてもこの映画を、
受け入れることが出来なかった。
長い時間を経て、もう一度みたときに、
人がなぜ死ぬかは誰にもわからない。
これから訪れるかもしれない不幸を回避するために?
死で誰かに気持ちを知らせるために?
誰かが死んでも日々の生活はまた繰り返され、
幸福はいずれ訪れる。
男と女 ■un homme et un femme
1966年フランス クロード・ルルーシュ監督

モノクロを織り込んだ映像の美しさと、
香りたつようなエレガントな演出。
無駄な台詞をいっさい排除した、
感覚だけで味わう愛のかたち。
アヌーク・エーメの美しさは その美しさだけではなく、
内面から漂う洗練されたセンス。
冬・海・風・雲・ かもめ・犬・子供たち
そして男と女。
F・レイのテーマ曲があまりにも有名だが、
作品中使われている音楽はどれも素敵。
いつも二人で ■Two for the road
1966年アメリカ スタンリー・ドーネン監督

ヘプバーン主演の中でもかなり地味な
部類に入ると思う。
ジバンシーを着ていなくても、
どんなに歳を重ねても彼女は美しい。
倦怠期を迎えた夫婦が若くて
情熱的だった頃を回想しながら旅をする。
変っていく髪形と、
グレードアップする車と生活レベルで、
その移り変わりが顕著に。
フロントガラスにきらめく新緑が印象的。
アルバート・フィニーもうまいし、
若いジャクリーン・ビセットも美しい。
いつも心に太陽を ■To Sir,with love
1967年 ジェームズ・クラベル監督

名優シドニー・ポワチエ主演、
60年代のロンドン下町の不良高校生と
新任教師の心のふれあいを描いたドラマ。
今みるとまったく不良にみえない生徒たち。
実は純粋で孤独な心を持った生徒たちと、
真剣に向き合うポワチエの距離は
徐々に縮まっていく。
次第に心を開いていく生徒たちの様子は
誰もが本当は学びたいのだ、というメッセージ。
特に美術館見学のときのスナップショットの
生徒たちのいきいきとした表情は特に忘れられない。
舞台となっているのロンドンの情景、
当時のティーンエイジャーの
ファッション、 音楽、考え方、すべてが新鮮。
招かれざる客
■GUESS WHO'S COMING TO DINNER
1967年 スタンリー・クレーマー監督

当時まだ異人種同士の結婚が少なかったアメリカ、
黒人男性を婚約者として連れた来た娘、
リベラルを自認してきた白人夫妻の葛藤。
スペンサー・トレイシーとキャサリン・ヘップバーンの
ゴールデンコンビの息の合った名演技。
シドニー・ポワチエの凛々しさ。
ここに登場する人はみんな善良な人ばかり。
なのに厳しい現実に向き合った時には、
今までの自分の理想さえ揺らぎ、苦悩する。
人間はそうやって何かを乗り越え、
新しい文化を創っていくのだろう。
たった一夜で素晴らしい人間模様をみせてくれる、
オープニング、着陸する飛行機、流れるBGM、
希望に満ちたジョーイとジョンの姿が輝く。
女優陣のコスチュームも魅力的、
この時代の女性はいつもきちんとした美しいスタイル。
